市販品の3分の1以下の価格で車高調整——ESP32で作るオープンソースのエアサスコントローラー

FabScene(ファブシーン)

市販のエアサスペンションコントローラーは15万円以上するが、ESP32を使えば5万円以下で同等以上のシステムを自作できる。Maker「gopro_2027」氏が3年半かけて開発したオープンソースプロジェクト「OASMan」は、PS4やXboxのコントローラーでも車高を操作でき、機械学習で空気の流量を最適化する機能まで備える。

エアサスペンションは空気圧で車高を調整するシステムだ。走行状況に応じて車高を変えられるため、スポーツカーやカスタムカー愛好家に人気がある。ただし市販のコントローラーは高価で、代表的な製品「Airlift 3P/3H」は約1500ドル(約23万円)もする。

gopro_2027氏は2022年、この価格に納得できずArduino Nanoでコントローラーの自作を始めた。5VのマイコンでソレノイドバルブをFETで制御する基本的な構成だったが、1年半ほど自分の車で問題なく動作した。

2024年にプロジェクトをRedditで公開したところ、フィンランドのユーザーからESP32版の回路図が届いた。これをきっかけに開発が加速し、わずか2か月でESP32への移行を完了。BLE(Bluetooth Low Energy)による無線通信、タッチスクリーンコントローラー、ゲームパッド対応など機能を次々と追加した。

機械学習で空気圧を最適化

エアサスペンションでは、目標の車高に到達するまでバルブを開閉する必要がある。しかしバルブを開いている間は正確な空気圧を測定できないため、「どのくらいの時間バルブを開けば目標圧力に達するか」を推測しなければならない。試行回数が増えるほど時間がかかる。

OASManはこの問題に機械学習で対処した。車両ごとの空気系統の特性を学習し、最小限の試行で目標圧力に到達できるようになっている。

市販製品との大きな違いは、コントローラーが完全にワイヤレスな点だ。一般的な製品ではコントローラーと本体が有線接続されており、車外からの操作には対応していない。OASManはBLEで接続するため、専用タッチスクリーン、スマートフォンアプリ、さらにはPS3、PS4、Xbox、Wiiなどのゲームコントローラーからも操作できる。

基板はJLCPCBでSMD実装済みの状態で発注でき、はんだ付けはほぼ不要。ファームウェアはWebページから書き込めるため、プログラミングの知識も必要としない。部品代は500ドル(約7万7000円)以下で、市販品の3分の1以下に抑えられる。

プロジェクトはGPL 3ライセンスで公開されており、すでに世界各地の車両に導入されているという。

関連情報

OASMan(GitHub)
OASMan公式サイト

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