壊れたジャンクスマホを改造、物理キーボード付きの最強スマホに変身

FabScene(ファブシーン)| テクノロジーの「現場」を記録するメディア

エンジニアのMarcin Plaza氏が、画面が破損したSamsung Galaxy Z Flipを解体し、BlackBerryキーボードを組み込んだユニークなスマートフォンに改造した。同氏は2025年9月にYouTubeとPCBWayで制作過程を公開し、コミュニティから高い評価を獲得している。

Galaxy Z Flipシリーズは折りたたみ画面の破損が多発しており、修理費用の高さから「電子ゴミ」と化するケースが少なくない。Plaza氏はこの問題を逆手に取り、壊れた端末を創造的にアップサイクルするプロジェクトを実施した。

改造では端末を完全に分解し、動作に最低限必要な部品のみを選別。ヒンジ機構を除去して上下を分離し、新たに4節リンク機構による「スライドアウト」動作を設計した。下半分にはBlackBerry Q10のキーボードを内蔵し、Arduino Pro Microを介してUSBキーボードとして認識させている。

CNC加工による筐体

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外装は完全に新設計され、PCBWayでCNC加工されたアルミニウム製筐体を採用している。ブラウンとグリーンの2色でビードブラスト処理・アルマイト仕上げが施され、工業製品レベルの仕上がりを実現した。

内部配線にはフレキシブルPCBを自作し、わずか0.1mm厚の基板でコンパクトな実装を達成している。BlackBerryキーボードの接続には専用のPCBアダプターを設計し、マイクロコネクターによる確実な接続を確保した。

技術的な挑戦として、USB-C PDプロトコルの実装に苦労したという。当初は電圧が不安定で動作しなかったが、適切な抵抗値の選定により5V安定供給を実現した。また、BlackBerryキーボードのマトリックススキャンをArduinoで処理し、Androidが認識するUSBキーボードとして動作させている。

Plaza氏は字幕付きYouTubeビデオで全制作過程を詳細に公開している。PCB設計からCNC加工、はんだ付け、プログラミングまで、個人レベルでの高度な製造技術を惜しみなく共有している。

完成した端末は物理キーボードによる快適なタイピングを実現し、Minecraft、Terraria、YouTubeなど各種アプリケーションが正常に動作する。マグネット式のロック機構により、キーボード部分の展開・格納が滑らかに行える。

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プロジェクトの背景には「なぜスマートフォンはつまらなくなったのか」という問題意識がある。Plaza氏は「数百万台生産される同じような長方形の板」への退屈さを指摘し、個性的なデザインへの回帰を提唱している。

完成品を実際に使用する様子も公開されており、周囲の反応は極めて好意的だ。「これは売るべきだ」「満足感がある」といったコメントが寄せられ、物理キーボードへの根強い需要を浮き彫りにしている。

ただし、Plaza氏は設計ファイルの公開について慎重な姿勢を示している。「一品制作のプロジェクトで問題もあり、大規模生産向けの設計ではない」として、完成度の高い状態での公開を検討している。

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