
読者投稿フォームに、日常に壮大なスケール感をもたらすユニークな作品の情報が寄せられた。そぞら氏が作成した「気象衛星ひまわりの画像を表示するスマートミラー」は、500円で購入したミラーデジタル時計を改造し、宇宙から見たリアルタイムの地球画像を表示するデバイスだ。小さなミラーの中に「いまの地球」が浮かび上がる仕組みになっている。
システムの核となるのは、Raspberry Pi Zero 2 Wと2.2インチ液晶ディスプレイ(ILI9341)だ。表示する画像は、国立情報学研究所(NII)が公開している「デジタル台風」プロジェクトから取得している。気象衛星ひまわりは赤道上空約3万6千kmの宇宙空間に位置し、地球の同じ場所を常に観測し続けており、この壮大な視点を家庭で手軽に体験できる。
制作過程では、時計内部のすべての部品を取り外し、ケース内部の構造物を加工してRaspberry Piとディスプレイを内蔵できるスペースを確保している。特徴的なのは、シート状のミラーの加工方法だ。裏面をマイナスドライバーで表面のコーティングを部分的に削ることで、その部分だけが半透明になり、中のディスプレイが外から透けて見えるように工夫されている。
赤外画像と可視画像の2つの表示モード

技術的な特徴として、気象衛星画像の特性を活かした2つの表示方法を実装している。ひとつは赤外画像をリアルタイムで10分ごとに更新表示する方法。赤外画像は地球や雲が放つ赤外線(熱)をもとに作られており、昼夜を問わず常に地球全体が表示される。夜でも雲の動きが見えるのが大きな利点だ。
もうひとつは、直近24時間分の可視画像を収集してアニメーション表示する方法だ。可視画像は太陽の光を反射した様子をとらえたもので、雲や地表を自然な美しい色合いで表示する。夜間は太陽光が当たらないため暗くなるが、24時間分を連続再生することで常に動きのある地球を楽しめる仕組みになっている。
システムはPythonで開発されており、画像取得用とアニメーション表示用の2つのプログラムを同時実行する構成だ。画像取得プログラムは8分ごとに最新のひまわり画像をダウンロードし、最大144枚(24時間分)まで保存する。アニメーション表示プログラムは、保存された画像を古い順に連続表示してアニメーション効果を生み出している。
Raspberry Piとディスプレイの接続にはSPI通信を使用し、SCK、MOSI、CS(チップセレクト)、DC(データ/コマンド切り替え)、RST(リセット)、BL(バックライト)の各ピンを適切に配線している。ディスプレイの解像度は240×320ピクセルで、気象衛星ひまわりの画像を鮮明に表示できる。
そぞら氏は「ミラー越しだと少しぼやけて見えるため、赤外画像のほうが輪郭がはっきりして見やすく感じる」とコメントしており、実用性も考慮した設計になっている。VNC(Virtual Network Computing)設定により、ケースに収納後も外部からのリモート操作が可能だ。