Raspberry Pi 5で15万円以下の高画質モノクロカメラを開発、フルスペクトラム対応でモジュラー設計

FabScene(ファブシーン)

モノクロ専用デジタルカメラは、ベイヤーフィルターがないため高い解像度と光感度を実現できる。しかし、Leica Monochromeは2000ドル(約29万円)以上、既存カメラのフルスペクトラム改造も数千ドル(数十万円)と高価だ。カラーセンサーからベイヤーフィルターを物理的に除去する方法もあるが、センサーに傷が残るリスクがある。

カナダの写真家Malcolm-Jay Wilson氏は、この価格障壁を打破するため、Raspberry Pi 5とSony IMX585モノクロセンサーを使ったウエストレベルビューファインダーカメラを製作し、YouTubeとSubstackで公開した。初回の製作コストは1000ドル(約15万円)以下だったが、製作プロセスの効率化により、現在は完成品を800ドル(約12万円)で販売している。3DプリントファイルとPythonスクリプトを含む自作用デジタルパックも提供されている。

フルスペクトラムとモジュラー設計

Sony IMX585は8.4メガピクセル、1/1.2型CMOSセンサーで、アマチュア天文写真用途で人気が高い。比較的大きなピクセルサイズと高感度が特徴で、可視光から赤外線までのフルスペクトラムに対応する。このカメラでは、IRカットフィルターを装着することで通常のモノクロ写真も撮影できる。

レンズマウントはCマウントを基本とし、Fujinonテレビレンズなどが使用可能だ。さらに、0.5倍フォーカルリデューサー(天体望遠鏡用)を組み込むことで、M42マウントレンズにも対応する。センサーのクロップファクターは約2倍だが、フォーカルリデューサーにより実効的なクロップが軽減され、Pentax TakumarなどのM42レンズを広角寄りで使用できる。いわば自作スピードブースターだ。

本体は3Dプリントで製作され、完全にモジュラー設計となっている。センサーマウントはコーナーのネジで簡単に取り外せ、IMX585のカラー版やRaspberry Pi HQカメラモジュールへの交換が可能だ。ビューファインダーも交換式で、Mamiya C220 TLRのウエストレベルビューファインダーを装着できるほか、3Dプリント製のサンシェードも用意されている。スタジオでのポートレート撮影時は、ビューファインダーを外して4インチディスプレイを直接使用することもできる。

電源は18650バッテリー2本(各3000mAh)で、2〜2.5時間の連続使用が可能だ。Raspberry Pi 5は従来モデルより消費電力が高いため、適切な電源設計が最大の課題だったという。Wilson氏はPanasonic、LG、Sony製の純正バッテリーを推奨しており、Amazonの安価なバッテリーは避けるよう注意を促している。

ユーザーインターフェースはPythonで実装され、多彩な機能を備える。フォーカスピーキングによりマニュアルフォーカスが容易になり、画面タップで任意の位置を拡大表示できる。ダブルタップでさらに拡大し、撮影後は自動的に全体表示に戻る。ヒストグラムも常時表示され、露出確認が可能だ。

シャッタースピードはボタン長押しで調整モードに入り、ボタンを押すたびに段階的に変更できる。ISO感度はオートまたはマニュアル設定が選択でき、400、800、1600といった値を直接指定できる。充電モードでは、バッテリー電圧と残量がパーセンテージで表示され、95%に達すると自動停止する。

フィルムシミュレーション機能も実装されており、Ilford Delta 400など複数のフィルムストックの質感を再現できる。これはプレビューと記録画像の両方に適用される。アスペクト比も柔軟に変更可能で、センサーネイティブの16:9のほか、パノラマ用3:1、レトロな4:3、スクエア、縦位置用5:4、3:4、9:16などが選択できる。Wilson氏は4:3とスクエアを多用しているという。

データ転送はUSB経由またはWiFi経由が選択でき、USBポートは本体側面に配置されている。WiFiのオン・オフもUIから切り替え可能だ。

Wilson氏はSubstackで詳細なビルドガイドを公開しており、新機能やアクセサリー、新センサーの情報も随時更新している。自作する場合は、3DプリントファイルとPythonスクリプトを含むデジタルパックを購入し、3DプリンターとRaspberry Pi 5の知識があれば製作できる。部品代は使用するセンサーやレンズマウントによって変動する。技術的な知識がない場合は、完成品カメラ(800ドル、約12万円)の購入も可能で、製作には4〜6週間を要する。

PetaPixelの記事によれば、このカメラは「大量生産された製品やスペック自慢ではなく、自由、意図、創造的なコントロールを求める写真家のために設計された手作りのオープンアーキテクチャカメラ」と位置付けられている。プラットフォームとして継続的に成長し、進化し、新しい創作方法を開拓していくことが目指されている。

関連情報

Inside My DIY Monochrome Camera Build(YouTube)
Camera Hacks by Malcolm-Jay Built, Not Bought(Substack)

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