音速を目で見る、200個のセンサーで体育館実験に成功

読者投稿フォームに、科学実験として非常にユニークな作品の情報が寄せられた。「工作記録帳」氏が制作した「音を『見る』!」プロジェクトは、音が聞こえるとLEDが光るセンサーを200個製作し、体育館に敷き詰めて音速を可視化する実験だ。手を叩くと光が「パパパッ!」と走っていく様子を実際に目で確認することに成功している。

音速は通常340m/s程度で、花火や雷で音が届くまでの秒数を数えて距離を計算した経験がある人も多いだろう。しかし実際に音が空気中を伝わっていく様子を平面的に観察できる機会は稀だ。このプロジェクトでは、「音が聞こえたらLEDが光る」という単純な仕組みのセンサーを大量製作し、音の伝播を視覚的に捉えることを目指した。

実験は体育館を借りて実施された。まず直線状に200個のセンサーを約20mの距離に並べて実験したところ、音が伝わっていく様子が狙い通り観察できた。この距離だと音が端から端まで到達するのにかかる時間は約0.06秒程度だが、肉眼でもなんとか視認できる事がわかったという。

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表面実装部品で個人製作を実現

200個という大量のセンサーを個人で製作するため、工作記録帳氏は設計段階から製造方法を工夫している。まず、部品をすべて表面実装にすることで、基板製造を外部委託できるようにした。最近では個人向けの格安基板製造サービスが充実しており、見積もりを取った結果、許容できる範囲でのコスト実現が可能であることを確認している。

また、昇圧回路を組み込むことで電池1本での動作を実現し、必要な電池の本数を削減して全体的なサイズの低減を図った。さらに電池と基板の配置を工夫し、音を集めるマイクの角度を整えるためのスタンドを別途作成しなくても自立するように設計されている。

直線実験の成功を受けて、次に10×20のマトリクス状に平面展開して実験を実施。中心部で手を叩くと、狙い通り音が円状に広がっていく様子が確認できた。この平面的な音の伝播可視化により、従来の一次元的な理解を超えた直感的な音速理解が可能になった。

後日、子供たちとその友達と一緒に再度実験を行ったところ、大盛り上がりとなったという。科学教育の観点からも、複雑な計算や理論説明なしに音速という物理現象を体感できる価値の高い実験装置として機能している。

工作記録帳氏は音の伝播を「直線的にだけではなく平面的に音が広がって伝わっていく様子」を見たいという動機から本プロジェクトを開始したとしており、個人の興味から出発した研究がユニークな成果につながった事例といえる。

※この記事は読者投稿フォームからの応募に基づいて作成しました。
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音を「見る」!

FabScene編集部

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