産総研、市販有機材料の少量添加でペロブスカイト太陽電池が85℃・2400時間の耐熱試験をクリア

FabScene(ファブシーン)

軽量・フレキシブルで曲面にも設置できるペロブスカイト太陽電池は、IoTデバイスの電源やビルの壁面など従来の太陽電池では対応できない場所への展開が期待されてきたが、「日本の夏を越えられない」という耐久性の壁が実用化の足かせになっていた。その課題に、市販の有機材料を使った意外にシンプルなアプローチで突破口が開いた。

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)再生可能エネルギー研究センターの神田 広之氏と村上 拓郎氏らの研究チームは、一般販売されている有機材料「2-フェニルピリジン」または「3-フェニルピリジン」を正孔輸送層に少量添加することで、ペロブスカイト太陽電池の耐熱性と屋外耐久性を大幅に改善することを実証した。成果は2026年3月13日に発表され、論文はNature Communicationsに掲載されている。

ペロブスカイト太陽電池は屋外設置時に表面温度が70℃以上に達することがあり、従来は高温環境(85℃)で数十時間以内に初期性能の10分の1以下に落ちるケースもあった。熱劣化の主な原因は正孔輸送層に添加する有機材料(従来は4-tert-ブチルピリジン)が高温下でペロブスカイト層に熱拡散し、正孔輸送層内に空孔(ボイド)を生じることにあるとされていた。

研究チームは分子構造の異なる36種類の材料を網羅的に評価し、熱拡散しにくい分子構造の条件を探った。その結果、ピリジン環の窒素原子に対してフェニル基が60度(2-フェニルピリジン)または120度(3-フェニルピリジン)の角度で結合した非直線的な構造を持つ材料が、ペロブスカイト層への熱拡散を抑制することを突き止めた。従来材料の4-tert-ブチルピリジンは分子が直線的で熱拡散しやすい構造だったのに対し、今回の材料は分子がねじれており拡散方向に抵抗を持つ。

この材料を用いたサンプルは、85℃・2400時間の加速耐熱試験で初期変換効率を100%維持した。さらに2025年6月から2026年2月にかけての実際の屋外暴露試験(夏季〜冬季をまたぐ約9カ月間)でも、効率の低下は観測されなかった。今回の正孔輸送層は塗布が容易で、層を厚めに形成できる点も量産プロセスへの適性として評価されている。

材料はいずれも市販されており、特殊な調達を必要としない。今後は耐湿・耐光試験や長期屋外暴露試験を経て、寿命20年以上の高性能ペロブスカイト太陽電池の開発を目指す。

関連情報

産総研プレスリリース(2026年3月13日)
論文 DOI(Nature Communications)

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