アメリカ・ピッツバーグに本社を置くスタートアップAstroboticは、開発中の次世代ロケットエンジン「Chakram(チャクラム)」が同種エンジンとして史上最長の300秒連続燃焼に成功したと2026年4月23日に発表した。試験はNASA Marshall Space Flight Center(米アラバマ州ハンツビル)で実施。2基のプロトタイプで合計8回のホットファイア試験を完了し、累計の運転時間は470秒を超えた。試験後にエンジンに目立つ損傷はなかったとしている。
Chakramは、ロケット業界が長年探っている「回転デトネーション式(RDRE:Rotating Detonation Rocket Engine)」と呼ばれる新方式のエンジンだ。従来のロケットエンジンが燃焼室で燃料を緩やかに燃やすのに対し、RDREはリング状の燃焼室の中を超音速の爆轟(ばくごう)波が連続で回り続ける仕組みで、同じ燃料からより多くのエネルギーを取り出せる。理論上は燃料効率が最大15%向上し、エンジンを小型・軽量化できる。一方で爆轟波を安定して制御し続けることが難しく、これまでは短時間の点火実験にとどまる例が多かった。今回は推力1基あたり4000ポンド(lbf、約1814kg)超を発生させ、点火直後の2回の予備試験を除く全試験で熱定常状態に到達した。
Chakramの中核を支えるのが、Astroboticと米Elementum 3Dが共同開発した特許技術「PermiAM」だ。PermiAMは、1つの金属部品の中で密度が高い領域と多孔(穴あき)領域を場所ごとに作り分けられる「多孔率を調整可能な金属3Dプリンティング」の手法。RDREのインジェクター(燃料噴射部)に応用することで、超音速の爆轟波がもたらす激しい熱を逃がしながら、燃焼を安定させる役割を担う。AstroboticのChakram担当主任研究員Bryant Avalos氏は「期待をはるかに超えた性能だった」とコメントした。
開発はNASAのSBIR(中小企業向け研究開発助成)2件と、NASA MarshallとのSpace Act Agreementの支援で進められてきた。Astroboticは今後、再生冷却(エンジン側で燃料を冷却剤として循環させる仕組み)、推力の細かな調整、軽量化に取り組み、Griffin級の月着陸船、Xodiac/Xogdor級の再使用ロケット、軌道間輸送機にChakramを搭載する計画。Griffin-1月着陸船は2026年7月以降の打ち上げ機会を狙っている。