
Bambu Labは2025年11月14日、マルチマテリアル3Dプリンター「Bambu Lab H2C」を発表した。独自開発の「Vortek」と呼ばれるノズル自動交換システムを搭載し、最大7色の材料廃棄ゼロでの印刷を実現。別売のフィラメント自動供給システム「AMS」との組み合わせでは最大24種類のフィラメントを同時使用できる。価格は記事初出時では直販ECサイト価格2249ユーロ(約40万5000円)。日本国内での販売価格は未定。現在は予約を受け付けている。
H2Cの特徴は、最大6つのノズル(ホットエンド)を自動で付け替えながら印刷できる点にある。各ノズルには前回使用したフィラメントの情報を記憶するメモリーが内蔵されており、次回使用時に自動的に適切な設定を提案する。7色以下で印刷する場合、色を切り替える際に通常必要となる「洗浄用の材料吐き出し」を完全に省略できるため、フィラメントの無駄が大幅に減る。

ノズル交換は非接触通信により数秒で完了し、どのノズルをどのフィラメントに使うかをプリンター側が自動判断する。従来の機械式接続を排除したことで、接点の摩耗や酸化による故障リスクを低減した。
加熱方式には電磁誘導を採用し、ノズルはわずか8秒で作業温度に到達する。従来の抵抗加熱式と比べ、材料切り替え時の待ち時間を大幅に短縮できる。
位置決め精度は50マイクロメートル(0.05mm)以下を実現し、ノズル交換後も誤差なく印刷を継続できる。フィラメントを押し出す機構には、従来のステッピングモーターより約70パーセント高い押出力を持つサーボモーターを採用した。高速印刷時でも安定した材料供給が可能となる。
印刷開始前には造形プレートを自動スキャンし、ノズルとの互換性を確認する。内蔵カメラがフィラメントの押出状況をリアルタイム監視し、異常を早期検出する仕組みだ。
主な仕様は次の通り。造形サイズは最大330×320×325mm、最大ノズル温度は350℃、ヒートベッド最大温度は120℃、アクティブチャンバー加熱は65℃まで対応する。対応ノズル径は0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mmの4種類。本体寸法は492×514×626mm、重量は32.5kg。

監視用カメラを4台搭載し、ドアセンサー、フィラメント切れセンサー、絡まりセンサー、電源喪失時の復旧機能など安全機能も充実している。チャンバー全体は難燃性材料で構成され、火災リスクに配慮した設計となっている。
オプションとして10Wまたは40Wのレーザー加工モジュール、カッティングモジュールも用意され、3Dプリント以外の用途にも対応する。「H2C Laser Edition」は両方のレーザーモジュールに対応し、通常版はカッティングモジュールに対応する。通常版も別売のアップグレードキットでレーザー機能を追加できる。
なお、現時点のファームウェアでは異なるノズル径の同時使用には対応していない。同じ径のノズルであれば、標準フロー型と高フロー型の混在使用が可能だ。また、6ホットエンドすべてを活用するフル仕様で使うには、別売の「Ultimate Set」の購入が推奨される。
Bambu Labは、既存機種「H2D」「H2S」のユーザー向けに、2026年初頭に「Vortekアップグレードキット」を発売予定としている。ただし、アップグレード作業は複雑で時間がかかるため、Vortek機能を求めるユーザーには直接H2Cを購入することを推奨している。
同社は、H2Cをメーカーやエンジニア、デザイナーなど産業グレードの信頼性を求めるユーザー向けに設計したとしている。

