米コーネル大学の研究チームが、羊毛を黒く染めて海水から真水を作る方法を示した。太陽光で水面だけを温めて蒸発させる仕組みで、1平方メートルの布から1時間あたり2.43kgの水が得られた。論文は2026年9月6日にAdvanced Scienceで公開された。
使うのはポリドーパミンという黒い高分子だ。皮膚や髪の色を決めるメラニンを人工的に作ったもので、光を吸って熱に変える。これで白いメリノウールを染める。さらにプラズマで表面を削ると、光を捕まえる細かい毛のような構造ができる。同じ研究室が2025年に、この2段階の処理で反射率0.13%という記録的に黒い布を作っており、今回はそれを水の処理に回した。黒さの手本になったのは、ニューギニアなどにすむフウチョウの一種、オオフウチョウモドキの羽である。
方法は界面太陽蒸気発生と呼ばれる。容器の水を丸ごと沸かすのではなく、布を水に半分浸けておき、日光で布だけを熱する。布は水を吸い上げ、表面で蒸気に変える。塩は布の側にほとんど残り、蒸気を冷やせば飲める水になる。
研究チームは3種類の編み方の羊毛を、3通りの置き方で試した。水面と平行に寝かせる置き方、垂直に立てる置き方、そして垂直に立てて背後に鏡を置き、両面から光を当てる置き方である。
結果が良かったのは、鏡を使う両面の配置だった。超黒色に処理した羊毛で毎時2.43kg、ポリドーパミンで染めただけの羊毛では毎時2.21kgだった。いずれも従来の水平に寝かせる方式のほぼ2倍にあたる。
この方式で問題になるのは、塩が布に詰まって性能が落ちることだ。研究チームは10時間の連続運転で塩の堆積が起きなかったと報告している。得られた水の塩分は、世界保健機関が飲料水に定める上限を大きく下回った。
Larissa Shepherd准教授は、大きな設備を持たない地域でも海水から真水を作れるようにするのが狙いだと説明する。合成繊維と違って羊毛は生分解するため、マイクロプラスチックの心配がない点も挙げている。筆頭著者は同研究室のKyuin Park氏で、2050年には都市部の人口のほぼ半分が飲み水に困るという予測を背景に挙げている。