
3Dプリンターメーカーの米Desktop Metalが2025年7月28日、連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請した。同社は2025年4月にイスラエルのNano Dimensionに約1億7930万ドル(約280億円)で買収されたばかりだった。買収完了からわずか3カ月での破産申請となる。
裁判所命令による異例の買収完了
両社の関係は2024年7月2日、Nano DimensionがDesktop Metalを1株あたり5.50ドル(約860円)の現金、総額約1億8300万ドル(約290億円)で買収することで合意したことから始まった。Desktop Metalの株主の96%が買収に賛成したが、Desktop Metalが防衛関連企業であることから必要となった米国外国投資委員会(CFIUS)の承認取得が難航した。
2024年12月にNano Dimensionの経営陣が交代すると、新経営陣は買収完了に消極的な姿勢を示した。これに対しDesktop Metalは2024年12月20日、デラウェア州衡平法裁判所に訴訟を提起。Nano DimensionがCFIUS承認取得のための「合理的な最善の努力」を怠ったと主張した。
2025年3月24日、裁判所はDesktop Metal側の主張を全面的に認め、Nano Dimensionに対し48時間以内に買収を完了するよう命じた。この判決を受けてDesktop Metalの株価は2.22ドル(約350円)から4.38ドル(約680円)へと97.3%上昇した。
Desktop Metalの財務状況は買収合意時点ですでに厳しい状態にあった。2024年の売上高は1億4880万ドル(約230億円)で、前年の1億8970万ドル(約300億円)から減少。純損失は2億1950万ドル(約340億円)に達していた。債務総額は約1億4395万ドル(約220億円)で、そのうち1億1500万ドル(約180億円)が転換社債だった。
破産申請はテキサス州南部地区連邦破産裁判所に提出され、15の関連会社も含まれている。資産と負債はそれぞれ1億~5億ドル(約160億~780億円)の範囲とされている。
Desktop Metalの欧州子会社(ExOne GmbH、EnvisionTEC GmbH、ExOne KK、AIDRO s.r.l.)は、Anzu Partnersの関連会社への売却で合意に達している。売却代金は債務返済と残存事業の安定化に充てられる予定だ。