
ドイツのエンジニアリング企業Entec-Straconが開発したアルミホイールの新しい鋳造技術「Turbu Pressure Casting」を、BMWとMercedesが採用する。ドイツ連邦環境財団(DBU)が2025年11月20日に発表した。
Turbu Pressure Castingは、従来の低圧鋳造と比べてエネルギー消費を50%、原材料使用量を25%削減できる製造技術で、100%リサイクル材料での製造にも対応する。Entec-Stracon創業者でCEOのRalf Bux氏が25年間の車輪開発経験をもとに開発し、2025年3月にドイツ・イノベーション賞を受賞した。2026年に量産を開始する予定で、自動車メーカーは長期的に低圧鋳造を完全に置き換える方針だという。
0.05秒で鋳造、従来の半分のエネルギーで製造
従来の低圧鋳造では、溶融したアルミニウム合金が金型の中央から流れ込み、重力によって広がる。冷却後には切削加工が必要となり、削り取られた材料は低品質なスクラップとなる。
Turbu Pressure Castingでは、アルミニウム合金を高圧で側面から金型に射出し、わずか0.05秒で鋳造を完了する。高速度と極めて低い金型温度の組み合わせにより、凝固後の金属粒子サイズが小さくなり、強度と延性が向上する。金型の輪郭に近い形状で鋳造するため薄壁断面が可能となり、後加工は最小限で済む。
エネルギー消費量は1ホイールあたり114kWhから57kWhへと半減する。1台の鋳造機で年間15万本以上のホイールを製造でき、年間約9GWhの電力を節約できる計算になる。これは4人家族約2200世帯分の年間消費電力に相当する。製造工程では天然ガスなどの燃焼系エネルギー源を使用しない。
リアルタイム品質管理で不良品ゼロ

Entec-Straconの鋳造技術で製造した自動車用アルミホイール(画像出典元:プレスリリース)
Turbu Pressure Castingでは、鋳造工程中に数百のセンサーがすべてのプロセスパラメータをリアルタイムで記録し、集中管理する。鋳造前と冷却後に金属合金を精密計量し、急冷後にはポロシティ(気孔)を検査する。品質に問題が生じた場合は即座に対処できるため、不良品が発生しない。
発生する二次材料はスプルー(湯口)とオーバーフローのみで、従来の切削スクラップと異なり高品質なため、次の鋳造工程で再利用できる。これにより100%リサイクル材料での製造が可能となった。
DBU環境技術担当のMichael Schwake氏は「車両が大型化し、EVバッテリーが重くなる中、部品の軽量化は大きな意味を持つ。このプロジェクトで多くの可能性を開拓できる」と述べている。

