中国エンビジョンエナジー、2枚羽根の風力発電機で500日連続稼働を達成 稼働率99.3%

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Envision Energys Two Blade Wind Turbine Achieves 500 Days of Stable Operation

中国の風力発電大手エンビジョンエナジー(Envision Energy)が2025年8月5日、2枚羽根の風力発電機のプロトタイプが500日以上の連続稼働を達成したと発表した。稼働率99.3%を記録し、一般的な3枚羽根の風力発電機と同等の発電性能を実証した。

風力発電機といえば3枚の羽根が回転する姿が一般的だが、この技術は羽根を2枚に減らしても同じ発電量を確保できることを証明した。軽量化とコスト削減が可能になるため、風力発電の普及拡大につながる可能性がある。

なぜ2枚羽根が注目されるのか

従来の風力発電機は3枚の羽根が標準的な設計となっている。これは風を効率的に捉えて回転エネルギーに変換するためのバランスを考慮した結果だ。しかし、羽根の数を減らすことができれば、製造コストの削減、重量の軽減、輸送の容易化といったメリットが生まれる。

2枚羽根の風力発電機は以前から研究されてきたが、振動の問題や発電量の不安定さが課題となっていた。3枚羽根と比べて回転時のバランスが取りにくく、機械全体に負担がかかりやすいためだ。エンビジョンエナジーは10年以上の研究開発により、これらの技術的な問題を解決したとしている。

同社は2012年からこの技術の開発を開始し、デンマークで海上用の2枚羽根風力発電機「ゲームチェンジャー」を開発した。2013年に実証機を設置してから蓄積してきた技術とノウハウが、今回の成果につながっている。

今回のプロトタイプは約2年間の実地テストを経て、様々な気象条件下での動作が検証された。風力発電機専用の試験設備を使用し、実際の運用で想定される数十種類の条件での性能確認が行われた。

普及への期待と課題

2枚羽根風力発電機の最大の利点は、建設と運用のコストを下げられることだ。羽根の数が少ないため製造費用が安くなり、重量が軽くなることで輸送費も削減できる。特に山間部や離島など、大型機器の運搬が困難な場所での設置が容易になる。

また、部品点数が少ないことでメンテナンスの負担も軽減される。風力発電機は屋外で常時稼働するため、定期的な点検や部品交換が必要だが、構造が簡素になることで維持管理のコストも抑えられる。

これらの利点により、これまで風力発電の導入が困難だった地域での普及が期待される。特に電力インフラが整備されていない発展途上国や、地理的制約のある地域での活用が見込まれている。

ただし、商用化には更なる検証が必要だ。今回は1台のプロトタイプでの実証にとどまっており、量産時の品質安定性や長期的な耐久性については継続的な検証が求められる。また、既存の3枚羽根風力発電機と比較した総合的なコストパフォーマンスの評価も重要な要素となる。

風力発電は太陽光発電と並ぶ主要な再生可能エネルギーとして世界各国で導入が進んでいる。2枚羽根技術の実用化により、より多くの場所で風力発電が活用できるようになれば、脱炭素社会の実現に向けた重要な技術となる可能性がある。

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