国際宇宙ステーションで植物栽培、Raspberry Pi活用の教育プログラム「ExoLab」に2万4000人以上が参加

FabScene(ファブシーン)

Raspberry Piを搭載した成長チャンバーを使い、国際宇宙ステーション(ISS)と地上の教室で同時に植物栽培実験を行う教育プログラム「ExoLab」が、これまでに15カ国から2万4000人以上の生徒と1400人の教師を集めている。Magnitude.ioが運営するこのプログラムは、2017年の初ミッション以来、12回のミッションを実施してきた。

プログラムの発端は2013年、Magnitude.io共同創業者のTed Tagami氏が友人から受けた挑戦だった。「宇宙で衛星を使った広告ネットワークを作れ」という提案に対し、1960年代生まれのTagami氏は「自分が宇宙プログラムを運営できるという可能性は見逃せなかった」と振り返る。広告には興味がなかったものの、科学や工学の知識ゼロの状態からMagnitude.ioを立ち上げ、4年後の2017年にExoLab-1として最初のISSミッションを実現させた。

FabScene(ファブシーン)
Magnitude.ioチーム(画像出典元:Raspberry Pi財団Webサイト)

ExoLabでは、参加する各学校にRaspberry Pi搭載の成長チャンバーが配布される。このチャンバーは温度、湿度、光、CO2レベルを追跡しながら、植物の成長をタイムラプス撮影する。生徒たちは種を植え、データを収集し、ISSで同時進行する実験結果とリアルタイムで比較する仕組みだ。

ミッション期間は4週間で、その間、生徒たちは世界中の教室とライブ配信で結ばれる。宇宙飛行士やNASA科学者から直接話を聞き、各自の観察結果を議論し、発見を共有する機会が設けられている。

2026年2月には最新ミッション「ExoLab-13: Mission MushVroom」が開始予定だ。このミッションでは、資源の乏しい遠隔地で1kg未満のキノコの菌床から長期生存を確保するという設定で、胞子から子実体までの菌類のライフサイクルを監視し、微細な菌糸をクローン化して永続的な生命を保証する技術を学ぶ。キノコは食料だけでなく、ビタミンD、医薬品、新素材の供給源としての可能性を持つという。

Raspberry Pi Foundationは、このExoLabプログラムが同財団の「Astro Pi」プログラムに似ていると指摘している。Astro Piは欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士と協力し、生徒が自分のコードをISS上で実行できるプログラムで、2024年には2万5405人の若者が1万7285チームで参加した。19歳未満であれば無料で参加でき、1時間以内にミッションを選んでコードの打ち上げを開始できる。

Raspberry Pi公式サイトでは、ExoLabのほかにも、ISS Mimicプロジェクト(ISSの100分の1スケールモデルを製作し、実際のISSの動きを模倣するプログラム)、宇宙グレードの廃棄物リサイクルシステム、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡にインスパイアされた万華鏡アートなど、宇宙関連のRaspberry Piプロジェクトが多数紹介されている。

ExoLabの成長チャンバーは995ドル(約14万5000円)で販売されており、Mission MushVroom関連のキットは15ドル(約2200円)から提供される。プラットフォームキーは通常249ドル(約3万6000円)だが、予約購入で199ドル(約2万9000円)となる。

関連情報

How thousands of students are growing plants in space with Raspberry Pi(Raspberry Pi公式サイト)
ExoLab(Magnitude.io)

fabsceneの更新情報はXで配信中です

この記事の感想・意見をSNSで共有しよう
  • URLをコピーしました!