紙のように薄いシートが思い通りに変形、韓国の研究チームが「自動折り紙ロボット」を開発

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手のひらサイズの薄いシートが、まるで生き物のように自在に形を変えて物を掴んだり移動したりできる技術が登場した。韓国科学技術院(KAIST)機械工学科のKim Jeong教授とPark In-kyu教授らの研究チームが2025年1月6日、電子制御で自動的に折り畳みができるロボットシートを開発したと発表した。

研究チームが開発したロボットシートは、6.3×6.3cmの平面状のシートでありながら、コンピューターからの指示で任意の場所を任意の角度で折り畳むことができる。従来の折り畳みロボットは事前に決められた動き方しかできなかったが、この新技術はスマートフォンアプリのように操作中に動作を変更でき、ユーザーの思い通りに瞬時に形を変える。

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熱を使った「筋肉」で自在に曲がる仕組み

この技術の秘密は、シート内に配置された308個の小さな発熱部品にある。各部品は電気を流すと熱を発生させる発熱器と、温度を測る温度計の両方の役割を果たす。シートは熱によって縮む材料と熱によって伸びる材料の2層構造になっており、部分的に加熱することで筋肉のように曲がる仕組みだ。

熱膨張係数の異なる二つの材料層が温度変化によって曲率を生み出し、30℃から170℃の動作範囲で−87度から109度の折り畳み角度を実現する。シートの強度を高めるため、内部にはマイクロサイズの補強材を格子状に配置している。

複雑な制御にはAI技術を活用している。ユーザーが「ここを曲げたい」と指定すると、コンピューターが308個の発熱部品にどの程度の電力を送れば最適な形になるかを0.8秒以内で計算する。複数の折り畳みパターンを同時に処理することも可能だ。

シート自体が温度を感知して自分の状態を把握する機能も備えている。これにより風が吹いたり周囲の温度が変化したりしても、狙った形を正確に保つことができる。

実証実験では、ペトリ皿から木の棒まで様々な物体を掴む可変グリッパーとして機能し、重量比4倍の物体を持ち上げることに成功した。また地面に置いた状態では、這う、歩く、引きずるといった生物模倣の移動パターンを実行し、1ストロークあたり最大26.44mmの移動距離を記録した。

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ロボットシートによる物体把持と移動動作の実演様々な形状の物体に適応したグリップと生物模倣の移動パターンを示している画像出典元Nature Communications論文

研究チームは今後、荷重容量の向上、冷却時間の短縮、外部配線を必要としない内蔵電極の開発を進める予定だ。将来的には災害対応、個別化医療機器、宇宙探査などへの応用を目指している。論文は2025年1月6日付のNature Communications誌に掲載された。

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Nature Communications

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FabScene編集部

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