
ドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE)の研究チームが、新型の太陽光パネルを開発した。ルーペ(凸レンズ)で太陽光を集めて紙を燃やすのと同じ原理を応用したマイクロ集光型太陽光発電(micro-CPV)パネルで、従来の商用パネルと比較して約50%多くの電力を生み出せる。変換効率は36%に達し、研究成果は2025年5月発行の『IEEE Journal of Photovoltaics』に掲載された。
小さなレンズで太陽光を集約、製造コストも大幅削減
新しいパネルは、小さなレンズで太陽光を集中させて発電効率を高める仕組みだ。従来の集光型太陽光パネルは部品の劣化や冷却システムが必要といった問題があったが、今回の設計では一般的な電子部品製造装置で組み立てができるよう工夫されている。
レンズ部分には安価なシリコーン素材を使用し、ガラス基板上に配置している。太陽光を受ける半導体チップは従来パネルの1000分の1の量で済むため、材料費を大幅に削減できる。チップは多層構造になっており、異なる波長の光からエネルギーを取り出せる設計だ。
研究チームは約200平方センチメートルの試作パネルで1年間の屋外実験を行った。パネルは太陽を自動で追尾する装置に設置され、理想的な条件下で36%の変換効率を達成した。実際の環境でも31.4%から33.6%の効率を維持している。現在市販されている最高性能のパネルが19%から24%程度であることを考えると、大幅な性能向上といえる。
1年間の試験期間中、パネルの性能劣化は見られなかった。フラウンホーファーISEのHenning Helmers氏は、小型化技術と量産プロセスの組み合わせにより大幅なコスト削減が可能になると説明している。
ただし、BloombergNEFのアナリストJenny Chase氏は、太陽追尾装置の設置コストが高いことを指摘している。研究チームは現在、この技術を商品化するためClearsun Energyという企業を設立して実用化を進めている。