Google、AI活用の核融合技術企業に1億5000万ドル投資

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カリフォルニア州に拠点を置く核融合エネルギー企業TAE Technologiesが6月2日、GoogleやChevron、NEAなどから1億5000万ドル(約230億円)の資金調達を実施したと発表した。同社は1998年の設立以来、総額13億ドル(約2000億円)を超える資金を調達している。

TAE Technologiesは、商用核融合発電の実現に向けて独自のアプローチを開発している企業だ。従来の核分裂発電と異なり、核融合は太陽や星が行っているエネルギー生成プロセスと同じ仕組みで、メルトダウンのリスクがなく、長期間の放射性廃棄物も発生しない。

同社のCEOを務めるMichl Binderbauer氏は「AIやデータセンターの成長により世界のエネルギー需要が指数関数的に増加している中、核融合は無限に近いクリーンエネルギーを提供してエネルギー情勢を変革する可能性がある」と述べている。

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Googleとの10年にわたる技術協力

TAE TechnologiesとGoogleは2014年から10年以上にわたって協力関係を構築している。Google Research のエンジニアがTAEの施設に常駐し、機械学習を活用した先進的なプラズマ再構築アルゴリズムを共同開発。この協力により、プラズマの持続時間と性能が大幅に向上した。

2025年4月、TAEは独自の核融合技術において重要なブレークスルーを発表している。「Norm」と呼ばれる実験装置で摂氏7000万度を超える安定したプラズマを簡素化された装置で実現した。この成果により、装置のサイズ、複雑さ、コストを最大50%削減できることが実証された。

2030年代の商用化を目指す

TAEが開発している核融合システムは、水素とホウ素を融合させてヘリウムを生成する。これらの元素は豊富に存在し、非放射性であるため、商用核融合発電所の運転と保守において最も持続可能な選択肢とされている。

同社は現在6代目の実証機「Copernicus」の建設を進めており、2020年代末までにネットエネルギー(投入エネルギーを上回るエネルギー出力)の達成を目標としている。さらに、2030年代初頭には最初の商用プロトタイプ発電所「Da Vinci」の運転開始を予定している。

TAEの核融合システムは従来の送電網インフラと統合できるよう設計されており、従来の核融合システムよりもはるかに小さい設置面積で類似の出力を実現できるモジュラー設計が特徴だ。これにより、人口密集地域、遠隔地、大規模データセンターなど、電力が必要な場所に安全に設置できる。

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FabScene編集部

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