ハイパーカミオカンデの超巨大地下空洞が掘削完了、直径69m・高さ94mで世界最大級

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東京大学は2025年8月5日、岐阜県飛騨市で建設を進めている次世代超大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「ハイパーカミオカンデ」の本体空洞の掘削が同年7月31日に完了したと発表した。直径69m、高さ94mの地下空洞は、岩盤内の人工空洞として世界最大級の規模となる。約2年9カ月をかけた掘削工事により、2028年の観測開始に向けた最も重要な建設工程の一つが完了した。

ハイパーカミオカンデ計画は、東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中核とする国際共同研究プロジェクトで、2025年7月現在、世界22カ国・約630名の研究者が協力している。岐阜県飛騨市の地下600mに、スーパーカミオカンデの約8倍の有効体積を持つ巨大水槽と2万個以上の新型光センサーからなる次世代素粒子観測装置を建設中で、2020年2月に正式始動した。

本体空洞は、直径約69mのドーム形状天井部(高さ約21m)と、その下に続く円筒形部分(高さ約73m)で構成される。建設地には日本有数の堅牢さを誇る飛騨片麻岩が広がっており、2020年度には総延長730mに及ぶボーリングや新たな坑道掘削など大規模な地質調査を実施した。

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画像出典元プレスリリース

情報化設計施工で安全性を確保

ドーム部分は上方からの大きな地圧を三次元的なアーチ効果で受け止める構造安定性の要となる部分で、2022年11月より吹付けコンクリートやPSアンカー(プレストレストアンカー)で天井面を安定化させながら空間を外側へ広げる工事を実施した。

天井崩落の危険性もある難工事を安全かつ効率的に進めるため、掘削にともなって得られる地質情報や岩盤の動きに関する計測データを使って空洞設計を随時更新する「情報化設計施工」の手法を採用した。

2023年10月に着手した円筒部の掘削では、発生する岩石(ズリ)の排出効率が工事進行を左右するため、円筒部中心に直径3.4mの立坑を底部のトンネルまであらかじめ掘削し、発生したズリを下部からダンプカーで効率的に排出した。途中で大掛かりな足場を組んでの追加壁面補強工事が必要となり、当初予定から約6カ月遅れたが、約33万㎥に及ぶ本体空洞の掘削を完了した。

2025年8月から水槽建設開始

今後は26万㎥の超純水を貯める水槽を本体空洞に構築する工事を2025年8月に開始する。2026年には装置を2層構造にするための構造体組み立てが水槽内で始まり、その後並行して光センサー等の機器取り付けも順次進める。

国内では新型の超高感度50cm径光電子増倍管(PMT)の量産が順調に進んでおり、海外機関が担当するPMT保護カバー、複眼光センサーモジュール、外水槽用光センサーユニット、電子回路システムといった各機器も開発から量産への移行を迎える。2027年にすべての機器取り付けを完了し、超純水の注水を経て、2028年に観測を開始する予定。

東京大学は「ハイパーカミオカンデ建設におけるすべての掘削工程が完了し、プロジェクトは最も重要なマイルストーンの一つを達成した」としている。

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東京大学プレスリリース

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