脳やがんの組織を、丸ごと高い解像度で立体的に見たい。だが、それを支える顕微鏡のレンズは高価で、扱いも難しかった。米Columbia大学のRaju Tomer氏らの研究チームが、安価なレンズでも高解像の立体画像を撮れる新しい光学の方式「HySIL」を開発した。成果は学術誌Nature Biotechnologyに掲載された。
これまで、高解像と扱いやすさは両立しにくかった。試料に油を介して密着させる「油浸レンズ」は最も鮮明だが、高価なうえ、見通せる深さはせいぜい数ミリで、試料の準備にも制約がある。一方、空気を介する安価なレンズは扱いやすいが、液体に浸した試料を見ると像がゆがみ、光も十分に集められなかった。
HySILは、この壁を越える。形のシンプルな固体のレンズと、屈折率をぴったり合わせた液体を組み合わせ、2つを1つの連続した光学系として働かせる。これにより、安価な空気用のレンズでも、センチメートル単位の大きな組織を高解像で撮れる。しかも、よく使われる試料の準備方法のほとんどに、装置を変えずそのまま使える。
研究チームは、この考え方を実機で示した。既存の「ライトシート顕微鏡」にそのまま付け足せる、取り外しできる装置「SCOPE」を作った。さらに、解像度をより高めた試作機「Super-SCOPE」も用意した。高価な専用機を新たに買わなくても、手元の顕微鏡に組み込んで使える点が、この方式の利点になる。
組織の立体画像は、神経のつながりを地図にしたり、病気の特徴を調べたり、診断を助けるAIの学習に使ったりと、用途が広がっている。Tomer氏は、性能と手に入れやすさの間にあった長年のトレードオフを崩したとしている。