
製造温度により粒子の形状が変化する様子がわかる
(画像出典元:Journal of the American Ceramic society)
米ノースカロライナ州立大学の研究チームが、レーザーを使って超高温に耐えるセラミック材料を短時間で製造する新技術を開発した。従来は長時間を要していた製造プロセスを秒単位に短縮し、宇宙船や原子力発電、ジェットエンジンなどへの応用が期待される。研究成果は2025年5月14日、米国セラミック学会誌に発表された。
研究チームが開発したのは、レーザーを使ってハフニウム炭化物(HfC)という超高温セラミックを製造する「選択的レーザー反応熱分解法(SLRP)」という技術だ。ハフニウム炭化物は融点が3000℃を超える材料で、宇宙船の大気圏再突入時の熱保護や極超音速ミサイル、ロケットエンジンなどの極限環境で使用される。
同大学機械航空宇宙工学科のCheryl Xu教授は「従来の焼結方法では、原料を少なくとも2200℃の炉に入れて長時間処理する必要があり、時間と大量のエネルギーが必要だった。新技術はより速く、簡単で、必要なエネルギーも少ない」と説明している。
レーザーで液体から直接セラミック生成
新技術では、出力120WのCO2赤外線レーザーを使用し、真空チャンバーやアルゴンガスで満たした容器内で液体ポリマー前駆体の表面にレーザーを照射する。レーザーは数秒間で最大2000℃まで局所加熱し、液体を固体セラミックに変換する。
この技術は2つの方法で活用できる。1つ目は既存の構造物への超高温セラミックコーティングの形成だ。極超音速技術で使用される炭素複合材料の表面に液体前駆体を塗布し、レーザーで焼結することで、構造全体を炉の高温にさらすことなくコーティングが可能になる。
2つ目は3Dプリンティングへの応用だ。ステレオリソグラフィーに似た手法で、液体前駆体の浴槽内でレーザーが層ごとに構造物のプロファイルを描画し、複雑な3次元構造を製造できる。
従来技術の2倍以上の変換効率を実現
実証実験では、液体ポリマー前駆体から結晶性で相純度の高いハフニウム炭化物の製造に成功した。Xu教授によると「液体ポリマー前駆体からこの品質のハフニウム炭化物を製造できたのは初めて」だという。
新技術の効率性も従来法を大幅に上回る。製造時間は従来の数時間から数日間に対し、秒から分単位に短縮された。また、レーザー焼結は前駆体質量の少なくとも50%をセラミックに変換するのに対し、従来法では通常20~40%に留まっていた。
さらに、真空チャンバーと3Dプリンティング装置の運搬は、大型の高温炉の運搬よりもはるかに容易で、技術の可搬性も向上している。
研究チームは、炭素繊維強化炭素複合材料へのハフニウム炭化物コーティングでも良好な結果を得ており、コーティングは下地構造に強く接着し、均一なカバレッジを示した。これらの材料は、ロケットノズル、ブレーキディスク、機体の熱保護システムなど幅広い用途で使用されている。
Xu教授は「セラミック分野でのこの進歩に興奮している。この技術を実用化に移行するため、官民のパートナーとの協力に前向きだ」と述べている。