
スマートフォンやEVを動かすリチウムイオン電池には、長年解決できない難題がある。充電を繰り返すうちに電極表面に細い結晶「デンドライト(樹枝状突起)」が育ち、それが内部を突き破ってショートや発火を引き起こすという問題だ。
これまで研究者たちは「リチウムは柔らかい金属だから、固体電解質(固体のイオン伝導体)で物理的に押さえ込めば防げるはずだ」と考えてきた。しかしライス大学とヒューストン大学の共同研究チームが、その前提を覆す事実を発見した。研究成果は2026年3月にScienceに掲載された(DOI: 10.1126/science.adu9988)。
チームは動作中の電池の中でデンドライトを世界で初めてリアルタイム観察し、さらに直接引っ張り試験を実施した。その結果、デンドライトは「非常に硬く、ガラスのように脆く折れる」という特性を持つことが判明した。太さはわずか数百ナノメートル(人間の髪の毛の100分の1以下)だが、充電中に形成される表面コーティングがコアを強化し、固体電解質でさえ突き破る剛性を生み出していた。
さらに、折れたデンドライトの破片が電気的に孤立した「死んだリチウム」として電池内に残ることも確認された。これが電池容量の劣化と安全リスクの両方を引き起こすという。
この発見は次世代固体電池の設計思想を変える可能性がある。硬い電解質で壁を作るだけでは不十分で、そもそもデンドライトが折れにくい性質のリチウム合金アノードに切り替えるという別のアプローチが有効かもしれない、と研究者は指摘している。

