
(画像出典元:Anduril Industriesのウェブサイトより)
VRヘッドセット「Quest」で知られるMetaが5月29日、アメリカの防衛技術企業Anduril Industriesと提携し、アメリカ軍向けの拡張現実(XR)技術を共同開発すると発表した。両社は戦場でのリアルタイム情報表示や無人兵器の直感的操作を可能にするXR機器の設計・製造・配備を行う。
この提携により、MetaのVR/AR技術とAI機能が、AndurilのAI駆動指揮統制システム「Lattice」と統合される。兵士は戦場で拡張現実インターフェースを通じて、数千のデータソースからの戦術情報をリアルタイムで受け取り、自律型プラットフォームを直感的に制御できるようになる。
元Oculus創業者の復帰と注目製品「EagleEye」
今回の提携は、2014年にOculusをMetaに20億ドルで売却し、2017年に同社を退職したPalmer Luckey氏によるAnduril創業の経緯を考えると特に注目される。Luckey氏は声明で「戦闘員をテクノマンサーに変えることが長年の使命であり、Metaと構築している製品がまさにそれを実現する」と述べている。
両社が開発する最初の製品は「EagleEye」と呼ばれるXRヘルメットシステムで、兵士の視覚と聴覚を大幅に強化する高度なセンサーを搭載する。このシステムにより、数マイル離れたドローンの検知や隠れた標的の識別が可能になるという。Luckey氏の言う「テクノマンサー」とは、技術により超人的な能力を身につけた戦闘員を意味している。
両社はすでにアメリカ陸軍の「Soldier Borne Mission Command(SBMC)Next」プログラム(旧IVAS Next)に共同提案書を提出している。これは総額220億ドルに達する可能性のある軍事契約で、Andurilは2025年2月にMicrosoftから同プログラムの管理権を引き継いでいる。
商用技術の軍事転用で開発費削減
Meta創業者兼CEOのMark Zuckerberg氏は「Metaは過去10年間、未来のコンピューティングプラットフォームを実現するためにAIとARを構築してきた。アメリカの軍人にこれらの技術を提供するAndurilとの提携を誇りに思う」とコメントしている。
両社によると、この取り組みは10年以上にわたる民間投資によるハードウェア、ソフトウェア、AI技術を活用し、完全に民間資金で実施される。商用向けに開発された高性能技術を軍事用途に転用することで、軍事予算を数十億ドル削減できる可能性があるとしている。
現在、AndurilのLattice統合IVASヘッドセットはテスト段階にあり、以前は180日かかっていたソフトウェア更新が18時間以内に現場に届くまでに短縮されているという。この提携は軍事契約の獲得にかかわらず継続される予定で、アメリカの技術的優位性確保と国家安全保障の強化を目指している。