金属なしで電気モーターが動く時代到来か、カーボンナノチューブ技術で重量80%削減

画像出典元:Korea Institute of Science and Technology(KIST)

電気自動車や宇宙船の軽量化に向けた技術革新が大きく前進した。韓国科学技術研究院(KIST)の研究チームが、銅線を一切使わずカーボンナノチューブ(CNT)のみで動作する電気モーターの開発に成功したと発表した。この技術により、従来のモーターと比較して重量を80%削減しながら、電気伝導率を133%向上させることを実現している。

2025年4月2日に発表された研究結果によると、開発されたモーターは実際に玩具の車を動かすデモンストレーションで、毎秒0.5メートルを超える速度で走行することを確認している。これは金属を全く使用しない電気モーターの実用的な動作実証となる。

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軽量化がもたらす革新的な変化

電気自動車やドローン、宇宙船といった将来の輸送手段にとって、軽量化は共通の技術課題だ。車両の重量削減は単にエネルギー消費を減らすだけでなく、バッテリー効率を高め、航続距離を延ばす効果がある。これは持続可能性と直結する重要技術で、システム全体の性能向上により炭素排出量削減にも貢献する。

電気モーターは多くの電気駆動車両に不可欠な部品で、中でもコイルがモーター全体重量の大きな割合を占めている。これまで高い電気伝導率を理由に銅などの金属がコイルの主材料として使われてきたが、資源確保の困難さ、価格変動、高密度による重量問題といった課題が指摘されてきた。

「第4の物質状態」を活用した純化技術

KIST複合材料研究所のDae-Yoon Kim博士率いる研究チームは、CNTの優れた特性を活用する新しい純化プロセスを開発した。CNTは炭素原子が六角形のハニカム構造に配列した1次元チューブ状ナノ材料で、通常の金属よりもはるかに軽量でありながら、優れた電気伝導率、機械的強度、熱伝導率を持つことで知られている。

しかし、CNTの実用化には製造過程で使用される触媒金属の残留という技術的障壁があった。これらは金属粒子としてCNT表面に残り、モーター性能に直結する電気特性を劣化させていた。

研究チームは液晶の配列原理を活用した新しいCNT純化プロセスを開発した。固体と液体の中間状態として知られる「第4の物質状態」である液晶を利用することで、CNTの配列時の強い凝集を自然に解決し、表面に残る金属粒子を効果的に除去する。最も重要な点は、CNTのナノ構造を損傷することなく選択的に不純物を除去できることで、既存の液相・気相ベースの純化方法とは明確に異なるアプローチだ。

純化されたCNTは伝導率が大幅に改善され、実際の電気モーターに応用可能なレベルまで到達している。実験では入力電圧に応じてモーターの回転数を安定制御できることが確認され、電気エネルギーを機械的回転力に変換するモーターの基本動作が金属なしで実現できることが実証された。

Kim博士は「これまで存在しなかった新概念のCNT高品質化技術を開発することで、CNTコイルの電気性能を最大化し、金属なしで電気モーターを駆動することができた」と述べている。さらに「CNT材料の革新を基盤として、バッテリー用導電材料、半導体用ペリクル、ロボット用ケーブルなどの材料の国産化をリードしていく」と今後の展望を示した。

この研究は科学技術情報通信部の支援を受け、韓国研究財団のGlobal Young ConnectプロジェクトとNano Connectプロジェクトの一環として実施された。研究成果は国際学術誌「Advanced Composites and Hybrid Materials」最新号に掲載されている。

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FabScene編集部

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