
人間の体の中にロボットを送り込み、病巣にピンポイントで薬を届けたり、細い血管の中で手術したりする——そんな未来を描いたマイクロロボットの研究が世界中で進んでいる。しかし大きな壁がある。「今ロボットがどこにいるのか」をカメラで常に把握し続けなければ、正確に動かせないのだ。体内や工業用配管の中では、カメラでの追跡が難しかったり、遅かったりすることが多い。
テキサス州のサザンメソジスト大学(SMU)のBASTラボが開発した新しい磁気コイルシステムは、この課題を解決するアプローチだ。研究成果はIEEE Accessに掲載された。
従来の磁気制御では、ロボットのいる場所に応じて磁場の強さをリアルタイムで調整する必要があった。これが常時カメラ追跡を必要とする理由だ。今回の新システムは「均一な磁場の勾配」を空間全体に作り出すことで、ロボットがどこにいても同じ力が加わるようにした。場所によって力が変わらなければ、位置を把握しながら力を調整する必要がなくなる。
装置はX、Y、Z軸それぞれに対応する2つずつ、合計6個のコイルで構成される。これを三軸磁力計で精密に調整し、数学的な最適化手法(Tikhonov正則化)で各コイルへの電流を計算した。コンピュータシミュレーションと実験の結果が99%一致したことで、システムの信頼性が確認されている。
現在は磁場を用いたマイクロロボットの制御に特化した研究だが、チームはカメラ以外のセンサーを使ってロボットの位置を推定する技術の開発も進めており、より複雑な環境での応用を目指している。

