
今のロボットの関節はサーボモーターで動いている。モーターは回転運動を直線運動に変換する必要があり、関節周辺に重量が集中するため、小型化や体への馴染みやすさに限界がある。人間の筋肉は違う。無数の細い繊維が束になり、体全体に分散しながら力を生み出す。
MITメディアラボとイタリアのポリテクニコ・ディ・バーリの研究チームが、この「繊維の束」という構造を人工的に再現した新しい駆動機構「電気流体繊維筋肉(Electrofluidic Fiber Muscles)」を開発した。研究成果はScience Roboticsに掲載された(DOI: 10.1126/scirobotics.ady6438)。
直径2mmのこの繊維は、外部タンクやコンプレッサーを必要としない。繊維の内部に螺旋状の電極を埋め込んだ「電気水力学ポンプ」を組み込み、電圧をかけると繊維内部の液体が動いて収縮・伸張する仕組みだ。稼働時の音はほぼ発生しない。
性能は人体の骨格筋に匹敵するレベルだ。出力密度は50W/kg(骨格筋と同等)、収縮率20%、応答時間0.3秒以内を達成している。繊維を束ねることでスケールアップでき、「180mm/秒で物体を弾く高速レバー」「自重の200倍(4kg)を持ち上げる束」「ロボットアームを40°曲げながら人の握手に耐えられる織り込み筋肉」の3種類のデモを実証した。
ロボットアームや義肢への組み込みでは、繊維が関節に集中するのではなく体全体に分散して配置できるため、設計の自由度が増す。研究チームは外骨格や補助装具への応用を見込んでいる。
今後の課題としては、バイアス圧(内部に事前にかける圧力)の最適化が性能を大きく左右することも論文で詳述されている。バイアス圧をかけることで動作電圧を最大200%高められ、収縮量が3倍になることが確認された。繊維の束ね方によって速度重視か力重視かをプログラムできるため、同じ材料で用途に応じたカスタマイズが可能だ。ロボットに人間らしいしなやかさを持たせるうえで、モーター主体の設計からの転換を促す可能性がある。

