三菱重工の護衛艦がオーストラリア海軍の新型艦に採用、11隻建造で日本の防衛技術が海外進出

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画像出典元プレスリリース

三菱重工業は2025年8月5日、オーストラリア(豪州)政府が同国海軍の新型フリゲート艦に、同社が建造する海上自衛隊「もがみ」型護衛艦の性能向上版を選定したと発表した。豪州は2024年11月に日本、韓国、ドイツ、スペインの4カ国に候補を絞り込み、今回日本案を正式採用した。11隻の建造が計画されており、日本の防衛技術の大型海外輸出案件となる。

三菱重工は2018年より「もがみ」型護衛艦を開発・設計・建造しており、2023年に行われた企画提案の結果、令和6年度型護衛艦(4,800トン型)の主契約者にも選定されている。今回の選定について同社は「『もがみ』型護衛艦と令和6年度型護衛艦に係る実績、信頼性、技術、能力が高い評価を受けた結果」と説明している。

評価された能力として、対潜戦、対空戦、対水上戦などの各種活動に活用し得る多機能化、従来の汎用護衛艦に比べての省人化、将来の能力向上も容易に行える拡張性を挙げている。

豪州は米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じて原子力潜水艦の配備を計画している。これに伴い水上戦力も再編し、老朽艦の退役や新型フリゲート艦11隻、無人艦6隻の導入で効率を高める方針だ。

海上自衛隊で2022年に就役した「もがみ」は全長133mとコンパクトで、一般的な護衛艦の半分程度の乗組員90人で運用可能となっている。豪州は雇用確保の観点から、導入するフリゲート艦のうち8隻の国内建造を求めており、これが受注の条件となっている。

過去の豪州潜水艦計画では敗退

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海上自衛隊で稼働するもがみ画像出典元海上自衛隊Webサイト

日本は2010年代、豪州のディーゼル潜水艦建造計画で「そうりゅう」型の売り込みを図ったが、フランスに競り負けた経緯がある。しかし豪州が2021年にAUKUS結成で原子力潜水艦導入にかじを切ったため、フランスとの契約は破棄された。

日本が受注するには、英・イタリアと進める戦闘機開発と同様、防衛装備移転三原則に合致するかどうかの審査を経る必要がある。

三菱重工は「日本政府や護衛艦建造に係る各企業と連携を取りながら、豪州政府による選定プロセスに対応し、最終的な契約の締結に向けて良い提案ができるよう取り組む」としている。また「日豪の企業が幅広く参画することで、両国の科学技術分野での人材育成や防衛産業基盤の強化が期待される」と述べている。

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