シリコン使用で電池容量70%向上、電気自動車の航続距離延長へ カナダ企業が開発

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カナダのNEO Battery Materialsが、電気自動車向けリチウムイオン電池の負極にシリコンを使用した新材料「NBMSiDE」を開発した。従来のグラファイト負極と比較して容量を40〜70%向上させながら、競合他社より60%以上のコスト削減を可能にしたという。

同社の技術は、シリコンの充電時の体積膨張という課題を「複合ナノコーティング層」で解決している。このコーティング層がシリコン粒子の表面全体を包み込み、体積膨張による機械的ストレスを効果的に制御する仕組みだ。開発した4つの製品「NBMSiDE-P100」「NBMSiDE-P200」「NBMSiDE-P300」「NBMSiDE-P300N」は、いずれも独自の1段階製造プロセスで生産される。

300回充放電後も90%の容量を維持

最新のP-300Nでは、300回の充放電サイクル後も90%の容量を維持することを確認した。これは当初目標の80%を上回る性能で、同社は「世界で最も安定した費用対効果の高い電池材料の1つ」と位置付けている。

P-300Nは冶金グレードシリコン(MG-Si)を原料として使用している。MG-Siは重量当たりでグラファイトの約半分のコストで、シラン気体やシリコンナノ粒子といった代替材料と比較して、製造コストの大幅な削減と供給チェーンの利用可能性で大きな優位性があるという。

同社のテストは、カソードとアノード材料を含む完全なリチウムイオン電池単位であるフルコインセルで実施された。これにより、リチウム金属を対極として使用し実際のリチウムイオンの在庫制限を考慮しないハーフセル構成とは異なり、商業レベルのエネルギー貯蔵動作をシミュレートした現実的な性能プロファイルが得られる。

大型電池への応用を目指す

NEO Battery Materialsは現在、P-300N材料を使用した大型パウチセルの設計に着手している。これには、実験室規模のコインセルよりも実際の商用条件により近い単層パウチセルが含まれる。同社は500サイクルを超えるテストを計画し、さまざまなカソード化学と高度なセパレーター膜とのP-300Nの相互作用をさらに検証する予定だ。

また、複数のカソード層とアノード層を積み重ねて同じ活物質を維持しながら総容量を増加させる多層パウチセルテストへの移行も準備している。この段階は通常、モジュールレベルのプロトタイピングに先立って行われ、電気自動車、防衛システム、定置型グリッドストレージで使用される電池フォーマットとシリコンアノード技術を整合させるために不可欠だ。

同社は韓国、米国、ドイツの電池プロトタイピング企業や大手メーカーからの関心の高まりを受け、下流パートナーからの需要増加に対応するため、追加の後処理およびスケールアップ処理装置を導入した。新しい高仕様製造ユニットは、同社のR&Dスケールアップセンターに設置され、スループットの改善とMG-Si処理における精密制御の向上を図っている。

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NEO Battery Materials

FabScene編集部