ラジコンカーで思うようなタイムが出ないとき、原因を勘で探るしかない。ハンドルを切りすぎたのか、加速のタイミングが遅かったのか、それともバッテリーが弱っていたのか。米国のエンジニアJake Wachlin氏は、実車のレースで使われるような計測の仕組みをラジコンに持ち込む基板「Open RC Spotter」を作り、設計データとソフトウェアを公開した。完成品はTindieで169ドル(約2万7700円)で販売する。
この基板を車体に載せると、走行中の様子がまるごと記録に残る。走った軌跡と速度はGPSで、車体にかかる力や傾きは加速度センサーで捉える。プロポで送ったハンドルとアクセルの操作量も同時に記録されるため、「どこでどう操作したら、車がどう動いたか」を後から突き合わせられる。コース脇に赤外線の目印を置いておけば、1周ごとのタイムも自動で刻まれる。バッテリーの電圧とモーターまわりの温度も一緒に残る。
記録されるデータの面白さは、これらがすべて同じ時間軸に並ぶことにある。microSDカードに書き出されるCSVファイルを表計算ソフトで開けば、タイムが落ちた周回で何が起きていたかを1つの表の中で追える。書き込みの間隔は初期状態で0.1秒ごと、センサーを読む頻度は毎秒100回だ。
GPSだけでは、細かな動きを追いきれない。毎秒5回しか位置が更新されないうえ、木の陰やコース脇の建物で精度も落ちる。そこでこの基板は、GPSの位置情報と加速度センサーの値を組み合わせて、その間を補間する計算を積んでいる。カルマンフィルターと呼ばれる手法で、GPSが飛んだ瞬間も車の位置と姿勢を推定し続ける。結果として、走行ラインを滑らかな軌跡として再構成できる。
走っている最中に手元で見たい人向けの機能もある。基板上のボタンを2回押すと、ESP32が無線LANのアクセスポイントとして立ち上がり、スマートフォンのブラウザーからログファイルをそのまま落とせる。ケーブルを挿し直す必要はない。もう1つ、ピット側にESP32をもう1台置く方法もあり、こちらは走行中のデータが毎秒20回のペースで飛んでくる。同氏が用意したWeb画面に流し込めば、実車のレースエンジニアのようにリアルタイムで数値を眺められる。
異常を知らせる仕組みも入っている。バッテリーが下限を割ったとき、温度が60℃を超えたとき、プロポからの信号が途切れたときなどを検知し、記録のたびに印を付ける。ただし製作者は、これは記録のための機能であって、電源を切る安全装置ではないと念を押している。
できないことも明記されている。加速度センサー自体の反応速度は毎秒約104回が上限で、設定を上げても同じ値を読み返すだけになる。ラップ計測は赤外線の点滅を数えているだけで、機器を識別する仕組みは持たない。GPSが3次元の測位を確保するまで、位置の推定は始まらない。無線でのデータ送信とファイルのダウンロードは同時に使えない。
ソフトウェアはArduino IDEのライブラリマネージャーから入れられ、記録だけの構成やピット側の受信機など、4種類のサンプルが付く。ライセンスはMITで、基板の回路図と部品表も公開している。