開発効率が飛躍的向上、OpenAIが「GPT-5」をリリース 計算効率は従来比70-80%改善

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OpenAIが2025年8月7日、最新の大規模言語モデル「GPT-5」をリリースした。同モデルは従来のGPT-4oやo3と比較して推論性能が大幅に向上しながら、計算効率も70-80%改善を実現している。特にソフトウェア開発支援機能が強化されており、ハードウェア開発者の作業効率向上や、AI処理専用チップの設計要件に大きな影響を与える可能性がある。

[画像URL:PDF内のベンチマーク比較グラフ キャプション:GPT-5の各種ベンチマークにおける性能比較。数学、コーディング、マルチモーダル理解で最先端の性能を達成している(画像出典元:OpenAI)]

「ソフトウェア・オン・デマンド」でハードウェア開発も変革

GPT-5の最大の特徴は、自然言語による指示だけで完全なアプリケーションコードを生成する「ソフトウェア・オン・デマンド」機能だ。OpenAIのCEOであるSam Altman氏は記者会見で、ユーザーが作りたいアプリを自然言語で説明するだけで、目の前でコードが生成される新時代が始まったと説明した。

実際のデモンストレーションでは、フランス語学習用Webアプリの要求仕様を入力したところ、14秒間の推論の後、数百行のコードが生成され、即座に動作するアプリケーションが完成した。この機能はハードウェア設計においても応用が期待され、回路設計やファームウェア開発の工程を大幅に短縮する可能性がある。

コーディング性能では、複雑なフロントエンド生成と大規模リポジトリのデバッグで特に優れた能力を発揮する。実務レベルのソフトウェアエンジニアリングタスクを用いた社内評価では最先端(SOTA)を達成し、他の最先端モデルと比較してツール呼び出し時のエラー率が半分に抑えられた。

システム構成では、高性能・高速度のハイスループットモデルと、より難しい問題に対応する高度な推論モデルの2つを搭載している。リアルタイムルーターが会話のタイプや複雑さ、必要なツール、ユーザーの明示的な意図に基づいて、どちらのモデルを使用するかを瞬時に判断する。OpenAIは将来的にこれらの機能を1つのモデルに統合する予定としている。

ハードウェア開発における活用の可能性

GPT-5は複数の技術ベンチマークで最先端の性能を記録した。数学分野のAIME 2025では、ツール使用時に100.0%、ツールなしでも96.7%の正解率を達成した。ソフトウェアエンジニアリング分野のSWE-bench Verifiedでは74.9%、多言語コード編集のAider Polyglotでは88.0%の正解率を記録している。

マルチモーダル理解のMMmuでは、従来モデルを大幅に上回る性能を示した。これらの結果は、GPT-5がハードウェア開発における設計検証、テストコード生成、ドキュメント作成などの作業を高精度で支援できることを示している。

特に注目すべきは、PhD レベルの科学的質問に答えるGPQA Diamondベンチマークで89.4%の正解率を記録したことだ。この性能レベルは、回路設計や信号処理、制御理論といった高度な専門知識を要する分野でも有効な支援が期待できることを意味する。

GPT-5の性能向上により、ハードウェア開発プロセスでの活用範囲が広がる可能性がある。公式発表によると、GPT-5は複雑なフロントエンド生成と大規模リポジトリのデバッグで優れた能力を発揮し、実務レベルのソフトウェアエンジニアリングタスクで最先端の性能を達成している。

自然言語による指示でコードを生成する機能は、ソフトウェア開発以外の分野でも応用される可能性がある。ただし、ハードウェア設計特有の要件や制約への対応については、実際の検証が必要となる。

計算効率の改善(思考時間とトークン数70-80%削減)は、AI処理を必要とするアプリケーションにおいて、より少ない計算リソースでの動作を可能にする。この効率向上が、将来的にどの程度のハードウェア要件緩和につながるかは、具体的な実装と検証を通じて明らかになると予想される。

データセンターとエッジデバイスへの影響

GPT-5の効率向上は、AI処理を組み込んだハードウェア製品の普及を加速する可能性がある。従来は大型のGPUが必要だった処理が、より小型で省電力なチップで実現できるようになれば、IoTデバイスやエッジコンピューティング機器への組み込みが現実的になる。

特に、GPT-5が2つのモデルを動的に切り替える仕組みは、処理の複雑度に応じてコンピューティングリソースを効率的に配分する新しいアーキテクチャの参考になる。OpenAIは将来的にこれらの機能を1つのモデルに統合する予定としており、この統合技術がエッジデバイス向けAIチップの設計に応用される可能性がある。

また、GPT-5で導入された「安全コンプリーション」機能は、従来の「拒否するか従うか」の二択を超えて、出力の安全性を判断するシステムに進化している。この機能実装には追加の計算リソースが必要となり、推論用ハードウェアの設計要件にも影響を与える可能性がある。

GPT-5は現在、ChatGPTのデフォルトモデルとして全ユーザーに提供されており、有料プランユーザーはより高機能な「GPT-5 Pro」も利用できる。なお、現時点では開発者向けAPIでの提供開始時期は明記されていない。

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公式発表

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