
Qualcomm Technologiesは2025年10月7日、オープンソースのハードウェアとソフトウェアを手がけるArduinoを買収すると発表した。同時に、Qualcomm Dragonwing QRB2210プロセッサを搭載した新製品「Arduino UNO Q」と、統合開発環境「Arduino App Lab」を発表した。
Qualcomm TechnologiesによるArduino買収は、Edge ImpulseやFoundries.ioに続く買収で、開発者向けのフルスタックエッジプラットフォームの提供を強化する狙いがある。取引の完了には規制当局の承認とその他の通常の条件が必要となる。
買収後もArduinoは独立したブランド、ツール、ミッションを維持し、複数の半導体プロバイダーのマイコンとマイクロプロセッサのサポートを継続する。Arduinoコミュニティの3300万人以上のアクティブユーザーは、Qualcomm Technologiesの技術スタックとグローバルネットワークにアクセスできるようになる。
Arduino UNO Q、Linux搭載のクアッドコアプロセッサとマイコンを統合
Arduino UNO Qは、Linux環境で動作するプロセッサと、リアルタイム処理を担うマイクロコントローラーの2つの頭脳を搭載したハイブリッド構成のシングルボードコンピュータ。クアッドコアのQualcomm Dragonwing QRB2210プロセッサ(GPU搭載)と、STM32U585マイクロコントローラーを1枚のボードに統合し、高性能コンピューティングとリアルタイム制御を両立させる。

Arduino UNO QはLinux Debianを動作させることができ、AIモデルの実行、画像・音声処理、Webアプリケーションの実行が可能。同時に、STM32マイクロコントローラーを通じてセンサーの読み取りやアクチュエーターの制御といったハードウェア制御も行える。スマートホームソリューションから産業自動化システムまで幅広い用途に対応する。
接続インターフェースはUSB-Cポート(PD対応)を備え、Wi-FiとEthernetによるネットワーク接続に対応する。シングルボードコンピュータとして使用する場合は、USB-Cドングルを介してキーボード、マウス、モニターを接続できる。4GBメモリ搭載版も今後発売予定。回路図とガーバーファイルはCC-BY-SA 4.0ライセンスで公開される。
Arduino UNO Qには「Arduino App Lab」がプリインストールされている。Arduino App Labは、リアルタイムOS、Linux、Python、AIフローを統合した新しいオールインワン開発環境で、初心者からプロフェッショナルまで幅広い層に対応する。Arduino IDEやArduino CLIも引き続き使用できるが、Arduino UNO Qの機能をフル活用するにはArduino App Labの使用が推奨される。
Arduino App Labは、Windows 10以降、macOS 11以降、Ubuntu 22.04以降、Debian Trixieに対応。Arduino UNO QのDebianOSにもネイティブでプリインストールされており、箱から出してすぐに開発を始められる。同一ネットワーク上でWi-FiまたはEthernet経由で複数のボードを同時に開発することも可能。Arduino App Labとアプリケーション開発用のApp Bricksライブラリはオープンソースで、ソースコードリポジトリも近日中に公開予定。
Edge Impulseプラットフォームとのシームレスな統合により、物体検出や人物検出、異常検出、画像分類、環境音認識、キーワード検出などのAIモデルの構築、調整、最適化を効率化できる。
従来のArduino UNO R4が純粋なマイクロコントローラーボードとして、シンプルで低消費電力なリアルタイム性能を提供するのに対し、Arduino UNO QはLinux対応プロセッサを追加することで、より高度なアプリケーション開発を可能にした次世代モデルとなる。
Arduinoは2025年10月7日午前7時(太平洋時間)/ 午後4時(中央ヨーロッパ夏時間)に、「From Blink to Think」と題したイベントのライブストリームを開催した。