ラズパイ搭載の医療AIチャットボットバッジ、DEF CONで配布

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Raspberry Pi財団は2025年11月14日、世界最大級のハッカーカンファレンス「DEF CON」で配布されたイベントバッジを紹介した。セキュリティ企業SolaSecとAI開発企業PamirAIが協力して製作したこのバッジは、最新の「Compute Module 5」を搭載し、インターネット接続なしで動作する医療相談用AIチャットボットを内蔵している。

このバッジはDEF CON内の「Biohacking Village」と呼ばれるエリアで配布された。Biohacking Villageは医療分野のサイバーセキュリティ向上と技術革新を目的とした催しで、毎年ユニークな電子バッジを参加者に配布している。

今回のバッジの特徴は、ポケットサイズの筐体に医療相談用のAIアシスタントを搭載した点だ。バッジに話しかけると音声を認識し、症状に応じた治療のアイデアを音声で返答する。すべての処理はバッジ内で完結し、クラウドサーバーへの通信は不要となっている。

SolaSecは「インターネット接続が不要で、プライバシーを保護しながら対話できるAI体験」をコンセプトに掲げた。この実現には従来のイベントバッジより高い処理性能が必要となり、過去の製品で使用していたRaspberry Pi Zeroから、より高性能なCompute Module 5への移行を決定した。

PamirAIは自社のAI実行環境「Distiller」をCompute Module 5向けに調整し、基板とソフトウェアを提供。SolaSec側は筐体設計と3Dプリント製ケースの製作、最終組み立てを担当した。バッジには3種類のAIモデルが搭載され、用途に応じて使い分けられる。

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画像出典元:Raspberry Pi財団Webサイト

製作を主導したBiohacking VillageのNina Alli氏とJennifer Agüero氏は、約1年をかけてバッジを完成させた。企画は前回のDEF CONで始まり、次回開催直前まで調整が続けられる。

Biohacking Villageでは毎年、生物学や医療技術をテーマにした電子バッジを配布している。過去には体内埋め込み型チップのRFIDリーダー、酵母培養用の寒天プレート、オープンソース腕時計、心拍を模倣する3Dプリント心臓モデル、呼気アルコール検知器付き救急車バッジなどが製作された。いずれも「キャプチャー・ザ・フラッグ」と呼ばれる謎解きゲームの要素を含んでいる。

Nina氏は、最近2年のバッジにニューヨーク市消防局の救急隊長だった父と、同市教育局で勤務していた母への追悼の意味を込めたと語った。救急車バッジは父の仕事を、今回のAIチャットボットは母の教育理念を反映したものだという。

同氏は「これらのバッジを通じて、参加者が新しい医療機器の開発に触発されることを願っている」とコメントしている。

関連情報

DEF CON Biohacking Villageバッジ紹介(Raspberry Pi公式)

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