
Raspberry Pi 財団は2025年7月29日、第2世代マイクロコントローラー「RP2350」の改良版となるA4ステッピングと、2MBフラッシュメモリを内蔵した「RP2354」を発表した。RP2350は5V耐性にも対応した。
A2ステッピングの問題を修正
RP2350は2024年8月の発売以来、Pico 2およびPico 2 Wボードとして50万個以上が販売され、サードパーティ製品にも採用されている。しかし、初期のA2ステッピングにはGPIOパッド設計のエラー(Erratum 9)やセキュリティ問題など複数の不具合があった。
A4ステッピングでは、GPIOパッドがハイインピーダンス状態に適切に移行しない問題を修正。これにより外部抵抗なしで入力をローに引き下げることが可能になった。また、RP2350ハッキングチャレンジで発見されたブートROMのセキュリティ脆弱性(Errata 20、21、24)も修正された。さらに、電源除去時のOTPの動作に関するセキュリティ脆弱性(Erratum 16)も修正し、60ピンRP235xパーツのGPIO_NSMASKレジスタの動作問題(Erratum 3)も解決している。
A4ステッピングは「メタルスピン」と呼ばれる手法で実装されており、設計内のゲートを接続する配線層の一部を変更することで機能的な変更を実現している。更新されたブートROMを含む変更は、ダイの下部に密集したブロックとして実装されている。ソフトウェアの互換性は維持されており、Pico SDK 2.2.0とPicotoolがA4ステッピングをサポートするよう更新されている。
2MBフラッシュ内蔵のRP2354
RP2354は60ピンのRP2350Aと80ピンのRP2350Bのピン互換バリアントで、Winbond製16Mbit(2MB)フラッシュダイをパッケージ内に搭載している。各RP2354パートは対応するRP2350パートより1個あたり20セント(約31円)高い価格設定となっている。
価格体系は以下の通り:
- RP2350A:単体1.10ドル(約170円)、13インチリール0.80ドル(約125円)
- RP2350B:単体1.20ドル(約190円)、13インチリール0.90ドル(約140円)
- RP2354A:単体1.30ドル(約200円)、13インチリール1.00ドル(約160円)
- RP2354B:単体1.40ドル(約220円)、13インチリール1.10ドル(約170円)
新たなハッキングチャレンジも開始
A4発表に合わせて、新たなRP2350ハッキングチャレンジも開始された。今回は暗号化されたファームウェアイメージを内部SRAMに復号化する際に使用される、強化されたAES暗号実装に対する実用的なサイドチャネル攻撃を見つけることが課題となっている。賞金は2万ドル(約310万円)。
また、レトロコンピューターハードウェアとの接続を行うユーザー向けに、RP2350が正式に5V耐性になったことも発表された。ただし、GPIOパッドに5Vが印加されている場合はIOVDDに電源を供給し続ける必要がある。
A2からA4への移行に伴い、Raspberry Pi財団はすでにA2の生産を停止し、すべての生産をA4に移行。A4はA2の完全な置き換え品として機能する。なお、約3万個のA3ステッピング(A4の一部修正を検証するための中間版)の在庫はPico 2およびPico 2 W製品の製造に使用される。