ラズパイで世界記録に挑戦 宇宙・深海・10年稼働の驚きプロジェクト

手のひらサイズのコンピューター「Raspberry Pi」が、宇宙から深海まで世界のあらゆる場所で活躍している。Raspberry Pi財団は公式ブログで、これまで13年間に生まれた「世界記録級」のプロジェクトを紹介した。小さなコンピューターが成し遂げた驚きの記録を見てみよう。

宇宙428km:学生が作った人工衛星が最高記録

最も高い場所で動いているRaspberry Piは、高度428km(267マイル)の宇宙空間にある。2022年にユタ州立大学の学生が製作した手のひらサイズの人工衛星「GASPACS」が117日間のミッションで達成した記録だ。

この人工衛星は「インフレータブル・エアロブーム」という風船のような装置を使った実験を行った。国際宇宙ステーション(ISS)にあるAstro Piよりも6km高い場所で活動し、学生プロジェクトとしては驚異的な成果となった。

気球で高度41km:アマチュア無線家の空への挑戦

Raspberry Pi誕生初期から長年にわたり、Dave Akermanというアマチュア無線家が気球を使ってRaspberry Piを空に送り続けている。2016年には高度41,837mという世界記録を達成し、アマチュア気球から送信された最も高い場所からのライブ映像として認定された。

ロケットを使わずに到達できる高度としては、これが最高記録となっている。成層圏のさらに上の中間圏まで到達し、地球の美しい写真を撮影して地上に送信した。

深海1500m:想像を絶する水圧に耐える探査装置

海の奥深く、水深1500m(約1マイル)という深海でもRaspberry Piが活躍している。「Maka Niu」という探査装置は、海面での148倍という想像を絶する水圧に耐えながら、Raspberry Pi ZeroとRaspberry Pi Camera Module 2で深海の映像を撮影している。

この深さは富士山の半分近い距離を海の中に潜った計算になる。低コストで作られたこの装置により、一般の人でも深海探査に参加できる「市民科学」の道が開かれた。

時速2万7520km:音速の22倍で宇宙を駆ける

速度記録では、ISS(国際宇宙ステーション)上のAstro Piが圧倒的だ。宇宙ステーションは地球を90分で一周するため、時速2万7520km(秒速7.67km)という猛スピードで飛行している。これは地上での音速の22.5倍に相当する。

地球に落下しないよう高速で移動する必要があるため、Raspberry Piも宇宙で「最速のコンピューター」として活動している。

10年間連続稼働:初代ラズパイの驚異の耐久力

最も長時間動き続けているRaspberry Piは、なんと10年以上も稼働し続けている。Redditユーザー「KerazyPete」の初代Raspberry Pi 1 Model B(メモリ256MB)は、2017年7月から2331日連続で動作している記録を2023年に報告した。

たまに停電などで再起動することはあったものの、10年間という長期間にわたって安定して動き続けているのは驚異的だ。これは家庭用パソコンではなかなか達成できない記録だろう。

オーバークロック:限界を超えた高速化実験

「どこまで高速化できるか」という挑戦も続けられている。オーバークロックと呼ばれる、設計値を超えた高速動作の実験だ。新しいRaspberry Piが発売されるたびに、世界中の愛好家が性能の限界に挑戦している。

財団は「実用的ではないが、技術的な探求として面白い」とコメントしており、こうした挑戦がRaspberry Piコミュニティの活力源となっている。

小さなコンピューター1台で、これほど多様で極限的な挑戦ができるのがRaspberry Piの魅力だ。宇宙から深海まで、世界中のメーカーたちが今日も新しい記録に挑戦し続けている。

関連情報

Extreme Raspberry Pi: projects taking Raspberry Pi to its very limits(Raspberry Pi財団公式ブログ)

FabScene編集部