
米粒をゆっくり圧縮すると硬いままだが、速く圧縮すると弱くなる。英バーミンガム大を中心とする国際研究チームが、この直感に反する現象をメタマテリアル(人工的に設計した構造材料)の設計に応用する手法を開発し、学術誌Matterに発表した。
通常の固体材料は速く押すほど硬くなる傾向がある。ところが米粒を詰めた状態では逆の現象が起きる。高速で圧縮すると粒同士の摩擦が急激に低下し、荷重を支える力のネットワークが崩壊するためだ。この現象は「レートソフトニング(速度軟化)」と呼ばれる。
研究チームは、米粒(速く押すと弱くなる)と砂(速く押すと硬くなる)を組み合わせた複合構造を設計した。ゆっくり力を加えると一方向に曲がり、素早く力を加えると反対方向に座屈するといった具合に、速度に応じて異なる変形をする。センサーも電子部品も電源も不要で、粒子間の物理法則だけで動作する。
バーミンガム大のMingchao Liu氏は「構造にどう反応するか指示するのではなく、物理法則に判断を委ねている。速い荷重と遅い荷重で異なる挙動が自動的に発生する」と説明している。
応用先として挙げられているのがソフトロボットと防護装備だ。ソフトロボットでは、電子制御なしに剛性を自動で切り替えられる軽量な構造材料として使える可能性がある。ヘルメットやプロテクターへの応用では、ゆっくりした動きには柔軟に追従し、衝撃を受けた瞬間だけエネルギーを吸収する、といった速度適応型の防護装備が考えられる。将来、3Dプリンターで成形可能な粒子を使えば、より制御しやすいメタマテリアルの量産も視野に入るだろう。
論文はCC BYライセンスで公開されている。
関連情報
Rate dependence in granular matter with application to tunable metamaterials(Matter誌、DOI: 10.1016/j.matt.2025.102562)
Adaptive & Intelligent Matter (AIM) Lab(Mingchao Liu氏 研究室サイト)

