東京科学大学、太陽光の長波長域を活用できる光触媒を開発――水素製造効率が従来の2倍に

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太陽光で水を分解して水素を作る「光触媒」の研究が進んでいる。東京科学大学の前田和彦教授らは、従来利用できなかった長い波長の光も吸収できる新しい光触媒を開発し、太陽光から水素へのエネルギー変換効率を従来の約2倍に高めた。2025年12月5日付で学術誌「ACS Catalysis」に掲載された。

光触媒とは、光を当てると化学反応を促進する物質のこと。水に光触媒を入れて太陽光を当てると、水が水素と酸素に分解される。この仕組みを使えば、化石燃料に頼らずクリーンな水素を作れる可能性がある。

課題は効率の低さだ。太陽光にはさまざまな波長の光が含まれているが、従来の光触媒は一部の波長しか利用できなかった。たとえば、これまで広く使われてきたルテニウム錯体を用いた光触媒は、波長約600nm(ナノメートル)までの光しか吸収できない。太陽光に含まれる赤色や近赤外域の長波長光は、そのまま素通りしてしまっていた。

金属をルテニウムからオスミウムに置き換え

前田教授らの研究チームは、光を吸収する色素に使う金属をルテニウムからオスミウムに変更した。オスミウムはルテニウムより重い元素で、「重原子効果」と呼ばれる量子力学的な現象により、より長い波長の光でも電子を励起できる。

オスミウム錯体を使った光触媒は、波長800nmまでの可視光を吸収できるようになった。これにより、従来のルテニウム錯体系では利用できなかった600〜800nmの長波長光も水素製造に活用できる。

実験の結果、可視光照射下での水素生成反応において、オスミウム錯体を用いた光触媒はルテニウム錯体系を上回る量子収率を示した。太陽光エネルギー変換効率は0.21%で、従来の約2倍となった。

現時点での変換効率は実用化には程遠いが、これまで無駄にしていた波長域の光を活用できることを実証した点に意義がある。研究チームは今後、錯体の分子構造を最適化することで、さらなる効率向上を目指すとしている。

関連情報

プレスリリース(東京科学大学)

論文(ACS Catalysis)

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