
中国・上海で、重さ7500トンの歴史的建物群を432台の小型ロボットが移動させる世界的にも例のない建設プロジェクトが進行している。2025年5月19日から開始されたこの取り組みは、世界の建設業界にとっても注目すべき技術的挑戦と言える。
上海建工二建集団(Shanghai Construction No 2 Group)によると、移動対象となっているのは上海市静安区張園内にある華燕里(Huayanli)建物群で、延床面積4030平方メートル、重量約7500トンの規模を誇る。この伝統的なシクメン様式の建物群は、1日平均10メートルのペースで移動しており、6月7日に元の位置への復帰が予定されている。
140年の歴史を持つ張園の地下開発プロジェクト

移動の目的は、張園の地下に3階建ての大規模な地下空間を建設することだ。140年以上の歴史を持つ上海最大級のシクメン建築群である張園において、5万3000平方メートルを超える地下開発が計画されている。完成後は文化・商業施設、100台以上収容可能な駐車場、そして地下鉄2号線、12号線、13号線を結ぶ交通結節点として機能する予定だ。
移動対象の華燕里建物群は1920年代から1930年代に建設された3棟のレンガ・木造建築で構成されている。張園内には1928年建設の大ホールなど密集した歴史的建造物が存在し、1940年代には愛国教育のための夜間学校として使用された建物もある。こうした歴史的価値の高い建物群が密集する狭い路地環境では、従来の建設手法では地下開発が困難だった。
この課題を解決するため、建設チームは複数の先端技術を投入した。まず、基礎工事には遠隔操作可能な小型ロボットを使用。これらの自走式低床掘削ロボットは、狭い出入り口や廊下を通り抜けて歴史的建造物内での基礎工事を可能にしている。
土工作業では、幅1.2メートル未満の狭いスペースでも稼働可能な折りたたみ式機械アームを搭載した専用ロボットを開発。深層学習アルゴリズムにより粘土と障害物を識別する機能も備えている。
設計段階では、BIM(建物情報モデリング)と点群スキャニング技術を活用し、詳細な3次元設計図を作成。これにより潜在的な衝突箇所や構造上の課題を事前に特定している。
上海建工二建集団都市更新建設会社の張毅総経理は「土壌除去のために複数の曲線輸送ルートを設計し、軌道ホイストとコンベアベルトを使用した工場生産ライン方式のシステムを導入することで、影響を最小限に抑えながら高効率を実現している」と説明している。
プロジェクト完了後、更新された張園複合施設は地上の歴史的保存と地下の現代的施設を統合し、周辺の高層ビル、ショッピングエリア、住宅街を結ぶハブとして機能する予定だ。