建設廃材から環境配慮型建材を開発 芝浦工業大学、CO2削減と廃棄物処理を両立


「アースシリカ 」と呼ばれるアルカリ性刺激剤(画像出典元:プレスリリース /  Professor Shinya Inazumi from SIT, Japan)

芝浦工業大学工学部の稲積真哉教授らの研究チームは、建設現場で出る廃材とリサイクルガラスを原料として、セメントを使わない新しい建材を開発したと2025年5月28日に発表した。この技術は、通常は廃棄される建設廃材を有効活用しながら、従来のセメント製造で発生するCO2排出量を大幅に削減できる画期的な技術として注目される。

建設業界の環境負荷軽減へ

国際エネルギー機関・セメント持続可能性イニシアチブ が2018年に公表したレポートによれば、セメント産業は世界のCO2排出量の約7%を占める主要な排出源となっており、環境負荷の少ない代替材料の開発は急務となっている。一方で、建設廃棄物の埋立処分も深刻な問題となっており、これらの課題を一挙に解決する技術として期待される。

開発された新しい建材は、外壁材を加工する際に出るサイディング切削粉末を110℃および200℃で熱処理し、リサイクルガラスから作られたアルカリ刺激剤「Earth Silica」と組み合わせることで、ジオポリマーという素材を形成する。この技術により、建設用途で要求される160kN/m²を超える強度を実現しながら、従来のセメントを使用しない地盤の安定化を可能にした。

研究チームは環境安全性についても配慮し、当初の配合でヒ素の溶出が検出された際には、水酸化カルシウムの添加により安定したヒ酸カルシウム化合物を形成させ、環境基準を満たす解決策を見出した。稲積教授は「持続可能性は環境安全性を犠牲にしてはならない」と強調している。

幅広い用途への展開が期待

この新しい建材は、道路、建物、橋などの基礎工事で軟弱な地盤を固める用途に活用できるほか、凍結融解や塩分、化学物質に対する耐性も確認されており、厳しい環境条件での使用にも適している。災害対応での迅速な地盤の安定化や、発展途上国での環境に配慮した建材としての活用も見込まれる。

また、建設業界の脱炭素化に向けた取り組みを支援し、グリーンビルディング認証や炭素削減目標の達成にも貢献する可能性がある。稲積教授は「資源制約のある世界において、産業副産物をどう価値あるものにするかを再定義している」と研究の意義を語っている。

この研究成果は、2025年4月21日にオンライン公開され、5月1日に学術誌「Cleaner Engineering and Technology」第26巻に掲載された。

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FabScene編集部