立ち乗り三輪モビリティ「ストリーモ」、大阪・関西万博で消防巡回車に採用

ストリーモ代表取締役・技術責任者の森庸太朗氏。手にしているのは、日本の道路交通法令の基準に適合していると認定する型式認定証

ストリーモは2025年6月12日、都内で記者説明会を開催。同社のこれまでの取り組みを発表すると共に、立ち乗り三輪モビリティ「ストリーモ」が大阪・関西万博で消防巡回車として採用された事例を紹介した。モリタホールディングスとの協業により、万博会場内での巡回警戒および予防査察に5台が使用されている。

ストリーモは前一輪、後二輪の三輪構造を採用した立ち乗り型の電動モビリティ。HONDAの新規事業創出プログラム「IGNITION」を経て2021年8月に創業した同社は、代表取締役の森庸太朗氏がHONDA時代に培った二輪・三輪開発の経験を活かして製品開発を進めてきた。独自開発の「バランスアシストシステム」により停止時も自立でき、時速1〜2kmの極低速から最高時速20kmまで安定した走行が可能だ。一般的な電動キックボードと異なり、立ったまま停止でき、ヘッドパイプをバイクのように傾けることで低速でも安定して右左折できる。

記者発表会によると、ストリーモの利用者は50〜70代が71%を占める。股関節や膝の痛みから長距離歩行が困難な方や、足を上げづらく自転車に乗るのが難しい方からの支持が多いという。電動キックボードを欲しがったが家族に止められた方でも、「ストリーモなら大丈夫」と許可を得られたケースもあった。

業務利用では金融機関の営業マンが約10ヶ月間で1台あたり1500km走行したケースがある。従来は自転車での営業活動で夏場の暑さや疲労が課題だったが、ストリーモ導入後は「自転車に比べて疲れが少なく、腰も痛くない」との評価を得ている。また、建設現場での活用では巡回時間を40%削減できた事例もある。

大阪・関西万博用にカスタマイズされた「ストリーモS01JT 防災巡回車」(画像出典元:プレスリリース)

万博会場で使用される「ストリーモS01JT 防災巡回車」は、消防仕様として赤く塗装され、360度カメラと通信機能を搭載。災害時のライブ映像配信や移動式通信中継器として現場ネットワーク構築の役割も担う。モリタホールディングスからは「狭い道や低速でも安定して走行できる点」が評価された。

ストリーモは個人販売、レンタルサービス、業務利用の3つの事業を展開している。同社は「移動用小型車」として2023年12月に日本初の型式認定を取得しており、歩行領域での走行が可能だ。今後は全国でのタッチポイント拡大を進め、シニア層でも購入しやすい体制を整備していく計画だ。

関連情報

ストリーモ

FabScene編集長。複数のエンタープライズ業界でデジタルマーケティングに携わる。2013年にwebメディア「fabcross」の設立に参画。サイト運営と並行して国内外のハードウェア・スタートアップやメイカースペース事業者、サプライチェーン関係者との取材を重ねる。

2017年に独立。編集者・ライターとして複数のオンラインメディアに寄稿するほか、スタートアップ支援事業者の運営に携わる。スタートアップや製造業を中心とした取材実績多数。