スマホやEVのバッテリーを長持ちさせるシリコン電極、レーザー1工程で製造する技術をイスラエルの大学が開発

FabScene(ファブシーン)

スマートフォンやEV(電気自動車)のリチウムイオン電池の寿命は、中の「アノード(負極)」と呼ばれる部品の耐久性で大きく変わる。現在は黒鉛(グラファイト)が使われているが、理論的には10倍以上多くの電気を蓄えられるシリコンへの置き換えが長年の課題だ。

問題は、シリコンが充放電のたびに膨らんだり縮んだりすること(最大で体積が3倍になる)だ。この変形が繰り返されると電極が割れ、急速に性能が落ちる。イスラエル・テルアビブ大学化学・材料科学部のFernando Patolsky教授らのチームは、この問題を一挙に解決する製造技術を開発した。シリコンの粉末・樹脂・リチウム塩の3種類を混ぜた素材にレーザーを当てるだけで、複雑な処理を1工程で完了させる。

レーザーが当たった部分では一瞬で2000度超の高温が発生し、シリコン粒子の周りにグラフェン(炭素の薄膜)の骨格が形成される。このスポンジ状のグラフェン構造がシリコンの膨張・収縮を吸収するクッションの役割を果たし、劣化を大幅に抑える。同時に、シリコンにリチウムをあらかじめ補充しておく処理(プレリチウム化)も同じ工程の中で完了するため、従来の複雑な多工程処理が不要になる。

試験では2000回以上の充放電後も容量の98%以上を維持し、4500回後でも83%を保った。1700mAh/g以上という容量は現在の黒鉛アノードの4倍以上にあたる。大気中での製造が可能で工程もシンプルなため、量産化への応用が期待される。同研究はNano-Micro Letters誌に掲載された。

シリコンアノードの実用化はEVメーカーや電池メーカーが長年求めてきたテーマだ。今回の技術は特殊な設備を必要とせず大気中で製造できるため、製造コストの観点でも量産への壁が低い。研究チームはフルセル(実際の電池構成)での評価でも良好な結果を得ており、今後の実用化に向けた検証を続けるとしている。

グラフェンと組み合わせることで膨張・収縮に耐えられるシリコムアノードの研究は世界各地で進んでいるが、今回の手法の強みは工程の単純さにある。使う材料はすべて入手しやすく、製造プロセスは大気中で動作する。複数の工程を要した従来の方法と比べて製造コストを大幅に下げられる可能性があり、バッテリー製造への応用が期待される。

関連情報

Nano-Micro Letters(DOI: 10.1007/s40820-026-02074-2)

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