Y Combinator出資のスタートアップが「AI対応ロボティクス開発キット」をオープンソース公開

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The Robot Learning Company(TRLC)の創設者Jannik氏が、AI搭載ロボット開発用のオープンソースキット「TRLC-DK1」をGitHubで公開した。同社は米国のアクセラレーション・プログラム「Y Combinator」採択企業で、人間の実演からロボットが学習する模倣学習に特化したスタートアップだ。

1日でデータ収集から自律動作まで実現

TRLC-DK1は、ロボット学習の研究開発を目的としたオールインワン開発キットで、開発者が1日以内にデータ収集から自律動作ポリシーの実装まで完了できるよう設計されている。従来のUR、Fanuc、ARX、Trossenなどの産業用ロボットは、ロボット学習用途で使用するにはハードウェアやソフトウェアに大幅な改造が必要だった課題を解決することを目指している。

システムは「リーダーアーム」と「フォロワーアーム」の2つの6+1自由度ロボットアームで構成される。リーダーアームはDynamixel XL330-M077-Tサーボモーターを使用し、6つの関節はエンコーダーで角度位置を読み取り、7番目のモーターはグリッパー用に電流制御でばね動作を実現する。フォロワーアームの公称ペイロードは約1.4kg、リーチは約700mmで、魚眼レンズ付きの手首カメラが統合されている。

LeRobotフレームワークとの統合

ソフトウェア面では、HuggingFaceが開発するロボット学習フレームワーク「LeRobot」とのネイティブ統合を実現している。LeRobotのCLIを使用してテレオペレーション(遠隔操作)を実行でき、カメラデータの可視化にはRerunを活用する。

開発環境はPython 3.10のconda環境で構築し、TRLCがフォークしたLeRobotが自動インストールされる。テレオペレーション実行時にはロボットポート、関節速度スケーリング、カメラ設定などをコマンドライン引数で指定する仕組みになっている。

創設者のJannik氏によると、機械設計と電気設計における「フォロワーアーム」の開発が最も多くの反復を要した部分で、シートメタル部品の複数回の再設計やケーブルの長さ・配線・絶縁に関する最適化に時間を要したという。

収集したテレオペレーションデータは、トランスフォーマーベースのモデルの学習に使用され、人間の行動を模倣する自律動作の実現を目指している。プロジェクトではGELLO、Low-Cost Robot Arm、LeRobot、OpenArmなどのオープンソースプロジェクトの成果を活用している。

部品リストやより詳細な技術情報は専用ドキュメントサイトで公開される予定だが、現在は開発中となっている。プロジェクトの最新情報はDiscordサーバーで共有されており、開発コミュニティへの参加も可能だ。

関連情報

GitHub – robot-learning-co/trlc-dk1

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