清華大学、0.6秒でmm級立体物を造形するホログラフィック光場3Dプリント技術「DISH」を開発

FabScene(ファブシーン)

高解像度な3Dプリントには時間がかかる。mm級の微細構造を従来の積層方式や点走査方式で造形すると、数十分から数時間を要するのが一般的だった。清華大学のDai Qionghai(戴琼海)氏らの研究チームは、ホログラフィック光場を使ってmm級の立体物を0.6秒で造形する技術「DISH」(Digital Incoherent Synthesis of Holographic Light Fields)を開発した。研究成果は2026年2月11日付でNatureに掲載された。

DISHはボリュメトリック方式(体積型)の3Dプリント技術に分類される。従来のボリュメトリック方式であるCAL(Computed Axial Lithography)では、光硬化性樹脂の入った容器を360度回転させながらパターン光を照射し、立体物を一括で硬化させていた。しかし容器の回転速度には機械的振動による制約があり、mm級の造形に数十秒を要した。樹脂が造形中に沈降しないよう高粘度(6000~1万cP)の材料が必要という制約もあった。

DISHでは容器を固定したまま、高速回転するペリスコープ(潜望鏡型光学系)で光の照射角度を変える。DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)が最大1万7000Hzでパターンを切り替え、回転するペリスコープと同期して多角度からホログラフィック光場を樹脂に照射する。容器側の要件は光学的に平坦な面が1つあれば足り、容器の回転も特殊な構造設計も不要となった。

解像度と造形速度のトレードオフを克服するため、研究チームは波動光学モデルに基づくホログラムの反復最適化アルゴリズムを開発した。開口数0.055の対物レンズで通常は被写界深度が約0.4mmに制限されるところ、コヒーレントレーザー光源とホログラフィック最適化により、焦点面から離れた位置でも高解像度の光変調を維持する。1cmの深さ範囲にわたって19μmの造形解像度を達成し、被写界深度の20倍以上の範囲をカバーした。最小造形サイズは12μmで、体積造形速度は毎秒333立方mmに達した。

材料の汎用性も特長の一つで、粘度4.7cPの低粘度PEGDA水溶液から、GelMA(ゼラチンメタクリロイル)やSilMA(シルクフィブロインメタクリロイル)などのバイオマテリアル、さらにDPHAやBPAGDAなどの硬質樹脂、UDMAの弾性材料まで幅広く対応した。流路と組み合わせた連続造形も実証しており、0.6秒ごとに異なる形状の立体物を次々と造形できる。固定した金型で同一形状を量産する従来の方式と異なり、毎回異なる形状を高速に造形できる点が特徴となっている。

将来の応用先として、研究チームはフォトニックコンピューティングデバイスやスマートフォンのカメラモジュールなど精密光学部品の量産、フレキシブルエレクトロニクスやマイクロロボティクス向けの微細部品、さらに生体組織工学でのハイスループットなバイオプリンティングを挙げている。ソースコードと実験データはGitHubで公開されている。

パーソナルなものづくりの観点では、ボリュメトリック方式はまだ研究段階の技術だが、光硬化型3Dプリンターの造形速度と解像度の限界を押し広げる成果として注目に値する。

関連情報

Sub-second volumetric 3D printing by synthesis of holographic light fields(Nature)

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FabScene編集部

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