シカゴ大、有害な溶剤を使わないEV用電池の製造法で性能も向上すると発表――カーボンと接着材の相乗効果を発見

FabScene(ファブシーン)

シカゴ大学プリツカー分子工学大学院(UChicago PME)の研究チームは、リチウムイオン電池の電極を有害な溶剤を使わない「ドライプロセス」で製造すると、従来方式よりも電池性能が向上するとする研究成果を発表した。論文は2026年2月18日付でNature Energyに掲載された。

リチウムイオン電池の電極は、エネルギーを蓄える活物質、電気の通り道を作る導電助剤(カーボン)、全体をまとめる接着役のバインダーという3つの材料で構成されている。従来の製造方法では、これらを溶剤と混ぜてペースト状(スラリー)にし、金属箔に塗って乾燥させる。この工程には有害な溶剤が必要で、電極を厚くするほど均一に塗るのが難しくなる。

ドライプロセスは溶剤を一切使わずに電極を成形する方法で、コスト削減と環境負荷低減が期待されることから、大手バッテリーメーカーやEVメーカーが開発を進めている。今回の研究は、このドライプロセスにコストや環境面だけでなく、電池性能そのものを高める効果があることを明らかにした。

筆頭著者のMinghao Zhang氏(UChicago PME研究准教授)は「ドライ方式は電池をより堅牢にし、より厚い電極でより高い導電性を実現し、高電圧でのサイクル特性も向上させた。いずれも予想外の成果だった」と述べている。

研究チームが見出したのは、カーボンとバインダーの間に生じる相乗効果だ。従来、この2つの材料はそれぞれ独立した役割を果たすと考えられてきた。カーボンは電気を通し、バインダーは材料を固定する。しかしドライプロセスでは両者の間に特有の化学的相互作用が生まれ、スラリー方式と比べてはるかに良好な導電ネットワークが形成されることが分かった。

高電圧サイクル安定性の向上にも同じメカニズムが寄与している。リチウムイオン電池のエネルギー密度を高めるには高電圧で動作させる必要があるが、高電圧環境ではカーボン添加剤の高い反応性が副反応を引き起こし、電池の劣化を早める原因になっていた。ドライプロセスでは、化学的に安定なバインダーがカーボン表面を部分的に被覆するため、カーボンの反応性が抑えられ、高電圧での副反応を大幅に低減できるという。

Zhang氏は「ドライ電極が工程を簡素化することは分かっていたが、高電圧サイクル安定性にも寄与するとは想像していなかった。この成果は将来のエネルギー密度向上にもつながる」と語った。責任著者のShirley Meng教授は「電極内で独立して機能すると考えられていた不活性材料同士が相乗効果を生み、構造的にも化学的にも安定な電池を実現した」と述べている。

研究チームは今後、電極の微細構造を最適化してリチウムイオンの伝導速度を高め、充電時間の短縮を目指す。Zhang氏は「充電時間をガソリン給油と同等にまで近づけたい」としている。

関連情報

論文(Nature Energy)
UChicago PMEプレスリリース

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