エスプレッソは、細かく挽いた豆に高温高圧の湯を通して作る。濃い味と香りの代わりに、加熱に多くのエネルギーを使う。オーストラリアのUNSW Sydneyの研究チームが、熱を使わず、常温の水と超音波だけでエスプレッソと同じ濃さのコーヒーを2〜3分で淹れる方法を開発した。成果はJournal of Food Engineeringに掲載された。
仕組みは「音響キャビテーション」と呼ばれる現象を使う。超音波を水に当てると、液中に微小な泡が大量に生まれ、瞬間的に潰れる。潰れるときに放出されるエネルギーが、コーヒーの粉から風味や油分、カフェインを引き出す。従来のエスプレッソマシンのフィルターバスケットに超音波振動子を取り付けて「超音波リアクター」に変えた。
研究チームは、日常的にコーヒーを飲む100人にブラインドテストを実施した。超音波で淹れた常温のエスプレッソと、従来の方法で淹れた熱いエスプレッソを飲み比べてもらった結果、両者を区別できなかった。フィルターコーヒーの場合は、超音波版のほうが苦味の評価で上回った。
エネルギーの削減効果は大きい。湯を沸かす工程がなくなるため、従来のエスプレッソマシンに比べて消費エネルギーが最大75%減る。大量生産の缶コーヒーやペットボトルコーヒーの工場では、加熱と冷却の両方のコストを省ける可能性がある。
コールドブリュー(水出しコーヒー)は12〜24時間かけて抽出するが、超音波エスプレッソは2〜3分で済む。チームの前回の研究(2024年)ではコールドブリューの時間短縮を示したが、今回はエスプレッソと同じ濃度と味を常温で再現した点が新しい。研究を率いたFrancisco Trujillo氏はこの方式の特許を出願している。