
カナダのWestern大学の研究チームは2025年10月28日、太陽光パネル、ヒートポンプ、サーマルバッテリーを統合した完全電化住宅をオンタリオ州Komokaに建設し、実証実験を開始したと発表した。初期データでは電気代を45%削減し、炭素排出量を55%削減した。化石燃料を使用せず、ネットゼロエネルギー住宅の実現を目指す。
従来システムの4倍のエネルギー効率を実現

システムは太陽光パネルで発電した電気をヒートポンプで熱に変換し、サーマルバッテリーに蓄熱する仕組み。サーマルバッテリーは塩やワックスなどの相変化材料を使用し、融解や凍結時に大量の熱エネルギーを吸収・放出することで安定した温度を維持する。
この設計により、従来のシステムと比較して4倍のエネルギー効率を達成した。サーマルバッテリーの導入により、太陽光発電の自家消費率が60%向上し、電力網への依存度を低減できる。
Pearce氏は「太陽光発電のコストは電力網の電気料金を下回り、ほとんどのカナダ人にとって太陽光が実用的で望ましい選択肢になった」と述べている。
実住宅での長期実証とデータ収集
Komoka市内の2階建て住宅が実証実験の場となっており、Magnus HomesのCrncich社長が実際に居住している。Rana氏は住宅にセンサーとスマート配線を設置し、エネルギー使用量、効率、コスト削減をリアルタイムで追跡する。データはモバイルアプリとPCで確認できる。
比較対象として、同じKomoka市内の同型住宅で、サーマルバッテリーと太陽光発電システムを搭載していない従来型の住宅もモニタリングしている。
カナダでは暖房コストが高く、多くの住宅が天然ガスまたは電気ヒーターで暖房している。Pearce氏によれば、カナダの多くの住宅は現行の建築基準を満たしておらず、最新の太陽光発電技術も搭載していない。
ヒートポンプを使用すると、電気エネルギー1単位から3単位の熱を生成でき、効率は300%以上になる。再生可能エネルギーで電力を供給することで、エネルギー価格の高騰に対するヘッジにもなるという。
研究チームは「気候変動は現実であり、全ての人が少しでも努力する必要がある。住宅部門の脱炭素化は手の届きやすい目標だ。カナダの新築住宅にこの持続可能なシステムを統合すれば、カナダの炭素排出量を大幅に削減できる」と述べている。
研究チームは1年間のデータ収集を経て、システムの有効性を検証し、カナダ全土、さらには世界中の住宅への展開を目指す。既存住宅への後付けも最小限の改修で可能だという。
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