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AIでハードウェアが作れる?オンラインハード設計「Blueprint」実践レビュー

Claude Codeのようなツールを使えば、自然言語で指示するだけでコードの生成や修正ができます。アイデアをすぐ動く形へと落とし込めるようになり、ソフトウェア開発の現場は大きく変わりました。

一方で、ハードウェアの世界ではAI活用はまだ限定的です。画像から3Dモデルを生成するといった分野は進展しているものの、回路設計やシステム構成といった領域は、依然として人手に頼る部分が多く残っています。

そんな中登場したのが、アイデアをもとにハードウェアの構成や部品リストまで提案してくれるAIツール「Blueprint」です。Blueprintは「どう作るかを考える」ことにフォーカスした設計支援ツールです。

本記事では、このBlueprintを使ってハードウェアの構想設計を試し、ソフトウェアのようにAIが開発プロセスをどこまで加速させてくれるのかを検証します。アイデアから設計のたたき台が生まれるまでの流れを通して、AIとものづくりの新しい関係を探っていきます。

「LEDアクセサリー」と打ち込んだら5秒で部品表が出た

まずは実際にBlueprintを試してみます。お題はシンプルに「LEDアクセサリー」としました。英語にしてBlueprintのテキストボックスに入力します。

すると次に、デザインを洗練させるための設問が表示されました。電源や制御方法、形状について聞かれました。お題がシンプル過ぎるので精度を高めるために聞かれているのでしょう。壁電源(AC100V)であることや、物理ボタンを付けることをリクエストしました。

数秒ほど待つと、ついにプロジェクトページが生成されました。

かっこいいデザインに仕上がりました。

生成されたプロジェクトの概要は以下の通りです。

ESP32マイクロコントローラーを搭載し、アドレス指定可能なLEDを駆動することで、カスタマイズ可能な照明パターンを実現します。本体にはモード切り替え、明るさ調整、電源オン/オフ機能を備えたボタンが配置されており、光拡散カバーと安定したベースを備えた3Dプリント製の筐体に収められています。電源は5V DCジャックから供給されるため、デスク上で連続使用できます。

結果を見て、よくできていると感じた点は、電子工作で扱いやすい5V電源が採用されていることです。また、単純な「LEDアクセサリー」というリクエストに対して、モード切替や明るさ調整といった実用的な機能が自然に組み込まれている点も印象的でした。

さらにコストも自動で算出されます。電気部品23.50ドル(3760円)、機械部品11.20ドル(1792円)、合計34.70ドル(5552円)という結果でした(1ドル160円で計算)。私の電子工作経験から見ても、かなり現実的なコスト感と言えます。

BOM・配線図・手順書、6セクションの中身

Blueprintで出力されたページは、INFO、BOM、WIRING、MECH、INSTRUCTIONS、PARTのセクションに分かれています。

INFOは、先ほど紹介したプロジェクト概要が記載されています。いわゆるREADME的なページです。それでは他のセクションも見ていきましょう。

BOMはBill of Materials、部品表のことです。使用する部品、個数、コスト、参考リンクなどが記載されています。全体としてかなり実用的な生成精度です。型式など細かな情報までリストアップされている点は特に優秀です。

選択すると製品の技術仕様やプロジェクト事例が閲覧できます。

WIRINGは配線図および電気システム構成図です。各部品の接続関係だけでなく、電圧や通信信号まで記載されており、製作時に十分活用できるレベルです。

電源やセンサーで色が分かれており見やすくなっています。

MECHは3Dモデルに相当する部分ですが、ここはやや簡易的です。部品配置やサイズ感は把握できるものの、全体像はワイヤーフレーム表示で、製品としての完成イメージが掴みにくい印象でした。現時点では「設計の下書き」として捉えるのが適切です。

マウス操作で回転可能です。

INSTRUCTIONSには組み立て手順が記載されています。必要なツールや前提条件から、ステップごとの作業内容まで丁寧に書かれており、初心者でも流れを追いやすい構成になっています。

PROに課金すると画像も挿入できるようです。

PARTは部品を検索し、プロジェクトに追加することができます。AI生成物の完成度を高めることができます。

全体を通して非常によくできていますが、やはりAIにも得意・不得意があります。特に3Dメカ設計に関してはまだ発展途上であり、現時点ではシステム全体の構想設計ツールとして使うのに向いています。

AIに従って作るーー設計30分、プリント1時間、組立30分

Blueprintの構想設計がどれほど役に立つものなのか、実際にLEDアクセサリーを作って検証します。

まずは出力されたデザインを参考にしながら、3Dモデルの詳細設計をしていきます。筐体は3Dプリンターで出力し、内部に電子部品を収める構造にします。

電気部品はBlueprintで生成されたBOMに従って選定しました。ただしネジについては、そのまま使用するのがなかなか難しく、自分の作りやすい方法に変更しています。このあたりは、AIの出力をそのまま使うのではなく、人間側の知識で補完する必要があります。

また、ソフトウェア開発はBlueprintの対象外ですが、Claude Codeを使って実装まで対応しました。

ハードウェア設計から組み立てて動かすまで、約2時間かかりました。内訳は設計30分、3Dプリント1時間、組立・動作確認30分です。

うまく光らせることもできました。

結局人が手を動かす時間はかかってしまいますが、デザインやシステム構想設計という、時間がかかりがちな工程をサポートしてもらえることで、開発効率が向上します。

同じ条件で2回作ったら、回路は同じでデザインは変わった

無事ハードウェアはできたものの、AIが今回たまたまうまくいくシステムを出力しただけかもしれません。そこで、AIの生成物に安定した再現性があるのかを検証してみます。同じLEDアクセサリーでプロジェクトを作り直してみたところ、以下のようなデザインになり、結構変化しました。

正直、こちらのデザインの方が好みでした。

しかし、BOMとWIRINGを見てみるとシステム構成はほぼ同じです。少し部品の型式が異なる程度でしょうか。

DCジャックの形状が変わってたりします。

画像生成AIなどで生成をしても、毎回デザインは微妙に変わってしまいます。デザインに関しては他のユーザーと重複するリスクもあるし、毎回変わるのはそれはそれで良いことなのかもしれません。それよりも、電気システム構成が毎回安定して出力されるのは高性能です。

AIの実力を振り返ってみる

振り返ると、Blueprintの生成物は「十分に実現可能な構成」になっていました。特にBOMと配線図は実用性が高く、プロトタイピングの出発点として非常に有効です。

一方で、3Dモデルの生成には対応していません。また、部品選定が最適とは限らない場面もあり、仕様や手順の記述に粗さが残る箇所も見られました。

現時点ではまだまだ人間の経験に頼る部分が大きく、完全な自動設計ツールというよりは、「設計のたたき台を高速で作るツール」として捉えるのが適切でしょう。特に、ハードウェア開発に慣れている人がプロトタイピングのヒントを得る用途には非常に向いています。

例えば、生成物にマイコンの情報が整理されているのは有用です。

文章から回路が生まれ、そのまま動くものが作れる。この体験は、これまでの電子工作とは少し違った感覚があります。「こういうガジェットが欲しい」と思った瞬間に、すぐ試作できる環境が整いつつあります。特にロボットやIoTのように複数の要素技術を組み合わせる分野では、このスピードは大きな武器になります。

これまでデザインやシステム設計がハードルだった人でも、まずはAIに任せて動かしてみる。そして動いたものをベースに理解を深めていく、そんな新しい開発手法も現実的になってきました。

AIは設計者を拡張し、やがて共創する存在へ

この検証から見えてきたのは、AIはまだハードウェア設計を完全に自動化する段階にはない、という現実です。特にメカ的な機構設計や電子回路実装ノウハウといった領域では、人間の経験や判断が不可欠です。

しかし一方で、アイデアを即座に構成へ落とし込めること、部品選定や配線の初期設計を高速化できること、そして試作までの心理的ハードルを下げる点では、すでに十分な実力を持っています。

(キャプション)Blueprintコミュニティ内のプロジェクトも、開発のヒントになるはずです。

そして今後、さらなる進化が期待されます。例えば、構想だけでなく実装や改善まで一貫して支援する存在へと発展していくでしょう。そうなったとき、AIは単なる補助ツールではなく、設計者と並走しながらものづくりを進めるパートナーに近い存在になります。

AIは設計者を置き換えるのではなく、思考と試行回数を飛躍的に拡張し、さらには共に設計を生み出す存在へと変わっていきます。「次はどんなハードウェアを作ってみようか」そんな発想を自然に引き出し、すぐに形にできる。このサイクルを何度も回せるようになることこそが、AIとものづくりを組み合わせる最大の価値になるでしょう。

小林竜太

Maker / Prototyper 本業では自動車メーカーでロボット開発。プライベートでは、遊べるモビリティや卓上ロボットを作ったりしている。「人の心を動かすものづくり」がモットー。