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「奇跡の全固体電池」、中身は通常のリチウムイオンと調査が指摘

電動モビリティ向けの「奇跡の電池」として注目されたフィンランドのスタートアップ、Donut Labの全固体電池をめぐり、その中身は通常のリチウムイオン電池だとする調査が公開された。米国のテックメディアを中心に相次いで報じている。調査したのはYouTubeチャンネル「Ziroth」のRyan Inis Hughes氏で、20人超の独立した電池専門家とともに、Donut Labが公開した試験データを分析し、うたわれた性能とは大きく異なると結論づけたとしている。Hughes氏自身は弁護士の助言として「詐欺」とは明言せず、すでに公になっている指摘を裏づける証拠を示す立場だと述べている。

Donut Labは2026年のCESで、エネルギー密度400Wh/kg、10万サイクルの寿命、5分での急速充電を、リチウムを使わない全固体ナトリウムイオン電池で同時に達成したとうたった。量産車への搭載も主張した。Hughes氏の調査によると、同社は1300人超の主に小口の投資家から約40億円(1ドル160円換算)を集め、評価額は一時、約2000億円に達したとされる。

電池の技術をたどると、複数の会社が関わる。Donut Labは電動バイクのVerge Motorcyclesから分社した会社で、販売と商業化を担う。製造担当とされるフィンランドのNordic Nanoは、Hughes氏の調査では一度も電池セルを造ったことがないと指摘される。技術の提供元は、スクリーン印刷関連の特許を持つドイツのCT Coatingsだ。Nordic NanoとDonut Labはいずれも2024年の設立で、CT Coatingsの特許にはスクリーン印刷の全固体ナトリウムイオン電池が記されていたという。

だが、Hughes氏が専門家とともに分析したセルは、それとは別物だった。手がかりは2つある。1つは電圧の特性で、充電50%付近で3.7〜3.8Vを示し、高ニッケルのリチウムイオン電池(NCM)の値と一致した。ナトリウムイオン電池は通常、この領域で3.5Vを超えない。もう1つは充放電時の膨張データで、黒鉛の負極に特有の、50〜70%付近で変化が緩む「キンク」が現れた。ナトリウムイオンは黒鉛の層に入るには大きすぎるため、リチウムイオンと判断できるという。フラウンホーファー研究機構の専門家ら20人超が、リチウムイオンだとの見方で一致したとしている。

エネルギー密度についても、VTT(フィンランド国立技術研究センター)が記録した94WhをCESで示したセルの質量315gで割ると、約298Wh/kgになる。CT Coatingsの旧型セルの第三者報告297Wh/kgとほぼ重なり、うたう400Wh/kgには遠いとHughes氏は算出する。ただし、VTTの試験は急速充電や高温動作、低い自己放電、パックでの100kW充電を確認した一方、核心の400Wh/kgと10万サイクルは検証していない、と同氏は指摘する。

明確に食い違う点もある。Donut Labは第1四半期に量産車を消費者へ出荷すると主張したが、予約者向けの内部動画では、初期分は社内向けの車両だと説明していた。これは定義上、量産前の試作車にあたる。Hughes氏は、CEOのMarko Lehtimäki氏がフィンランドの報道機関に対し、400Wh/kgの電池は顧客に納入しておらず、VTTがテストしたセルは出荷予定のものですらない、と認めたとする報道を紹介する。さらに同調査は、リークされたメールを根拠に、Donut LabがCT Coatingsに性能の証拠を求めたが提供されなかったと指摘する。

Donut Labを巡ってはCES 2026での発表以降、業界や専門メディアから懐疑的な声が上がっている。中国の電池大手Svoltの楊紅新CEOは、公にこの電池を詐欺と呼んだ。一方でHughes氏は、Donut Labのエンジニアがリチウムイオンのパウチセルでプロトタイプのパックを作り、100kW充電を達成した点は評価できるとする。

問題は、うたう全固体ナトリウムイオン電池とは別物のまま、投資家から資金を集めた点にあるという。Donut Labはこれまで、VTTによる第三者試験の結果を公開し、自社の主張を擁護してきた。本稿の時点で、この調査に対する同社の直接の見解は得られていない。記事はHughes氏の調査と関係者の指摘に基づく。

FabScene編集部

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