紙を折ったり切ったりするだけで、そこに電気回路ができる。香港城市大学のMEI Labが開発した「LiqMetCraft」は、ガリウムとインジウムの液体金属を含浸させた紙を使い、折り紙や切り紙の動作そのもので導電パスを形成する。成果は2026年のCHI(ACMヒューマンファクターズ学会)で発表された。
従来、紙に回路を作るには粘着銅テープを貼り付ける方法が一般的だった。しかし銅テープは折り曲げると断線しやすく、立体的な折り紙に適用するのが難しかった。LiqMetCraftは「折る」こと自体が回路を作る動作になるため、造形と配線を同時に進められる。
液体金属を紙にスプレーすると、金属は微細な液滴となり、表面に酸化皮膜が形成されて絶縁状態を保つ。紙を通常に扱う程度の力では導電しない。しかし、折ったり切ったりすると2.5〜100メガパスカルの圧力がかかり、液滴を覆う酸化皮膜が破れて隣の液滴と融合する。折り目や切り口に沿って導電パスが生まれる仕組みだ。
折り目の抵抗値は1cmあたり4.4Ωで、切り口は23.18Ω/cmだった。折り目を後から開いても導電性は維持される。含浸には液体金属とイソプロパノールの混合液をエアブラシで吹き付け、ボール紙のステンシルで不要な部分をマスクする。含浸済みの紙1枚(10×10cm)のコストは約1.8ドル(約290円)だ。
研究チームはこの紙を使ったツールキットを3種類作った。1つ目は中国の切り紙に基づき、円形の紙を扇状に折ってから切り、放射対称のデザインにLEDを配置する。2つ目は折り紙で、12種類のテンプレートから作品を折り、完成後にモーターなどを接続する。3つ目は立体ペーパーモデルで、カッティングマシンで型を切り出して自立する構造物を作る。いずれもブラウザー上のソフトウェアが折り方やLEDの配置を案内する。
42人の参加者がテストし、全員が使いやすいと回答した。研究チームは今後、ポップアップ絵本への応用や、折り紙でスイッチやポテンショメーターを直接作る方法も探る予定だ。