オーストリアの冷却ファンメーカーNoctuaは、自社製品の3D CADモデルを公式Webサイトのダウンロードセクションで一般公開した。同社の冷却ファンは精度の高さで知られる一方、これまで設計現場で参考にされてきたサードパーティ製のCADモデルは寸法に微妙なずれがあり、PCケースや組み込み機器の設計者を悩ませていた。今回の公開データは、取付穴の位置や外形寸法を実物と一致させた公式データという位置付けだ。
公開先はNoctua公式Webサイトの「Product-specific downloads」ページで、製品ごとにデータシート、マニュアル、3D CADファイルなどがまとめてダウンロードできる。同社は用途として、機械設計への組み込み、レンダリング、アニメーション、各種ビジュアル出力の作成を挙げる。設計の出発点として実物に正確な寸法情報を反映できるため、自作PCケースの3DモデリングやIoT機器のメカ設計、組み込み機器のサーマル設計時のレイアウト検討などで使い勝手が良くなる。
一方で同社は、知的財産保護の観点からCADモデルに2つの制限を設けたことも明らかにしている。1つは、ファンインペラ(羽根)の形状が実物と微妙に異なるよう調整されている点。もう1つは、内部フレーム構造が含まれていない点だ。インペラの羽根形状はNoctuaの主要な技術資産であり、外観上は近いが実物のジオメトリそのものではない。
公開データを見て真っ先に思いつくのは「3Dプリントしてしまえば安価なクローンファンが作れるのでは」という発想かもしれないが、Noctuaは公式ステートメントでこの用途を明示的に推奨外としている。同社は「これらのモデルをパフォーマンスシミュレーションや3Dプリントに使わないでください」と記し、インペラと内部フレームは実物を完全に表すものではないと注記した。利用条件としても、対象製品やそれに酷似した製品の製造・複製・商用化への利用を禁じている。提供形態は「現状のまま」「利用可能な範囲で」というディスクレーマー付きで、性能保証の対象外とすることも明記された。