オープンソースのコンピュータービジョンライブラリ「OpenCV」のメジャーアップデート版「OpenCV 5」が公開された。中核のディープニューラルネットワーク(DNN)の処理エンジンを刷新し、扱えるAIモデルの幅を大きく広げたのが目玉だ。画像認識のライブラリでありながら、大規模言語モデル(LLM)や、画像と言葉を合わせて扱うモデル(VLM)も動かせるようになった。
刷新したDNNエンジンは、処理の流れをグラフとして組み立て、無駄な計算をまとめて速くする設計に変わった。これにより、AIモデルの共通形式ONNXへの対応が大きく広がった。従来のOpenCV 4系はONNXの命令のうち2割ほどしか扱えなかったが、OpenCV 5は8割を超えるようになった。これまで読み込めなかった新しいモデルも、動く見込みが増える。新エンジンは既定で使われ、読み込めない場合は従来のエンジンに自動で切り替わる。
LLMやVLMは、別の実行環境を用意しなくても、DNNの仕組みの中だけで動かせる。文章を細かく区切るトークナイザーや、応答を順に生成するための仕組みを内蔵したためだ。画像を読み解くだけでなく、その内容を言葉で説明させるといった使い方が、1つのライブラリで完結する方向に近づいた。
処理を速くする最適化も広げた。Intel、Arm、Qualcomm、そしてRISC-Vのそれぞれのハードウェアに合わせた高速化の経路を用意した。OpenCVは、Raspberry PiやArmのボードといった安価な機器でもよく使われる。チップごとの最適化が進めば、手元の小さな機器でも、より重いAIの処理を動かしやすくなる。ただし、新しいDNNエンジンは今のところCPUだけで動き、GPUを使った高速化は今後のバージョンで加わる予定だ。
このほか、3D計測の機能や、扱えるデータの種類も増えた。一方で、C言語向けの古い仕組みは取り除かれ、開発に必要なC++の世代もC++17以上に引き上げられた。画像処理の定番ライブラリが、最新のAIを身近な機器で動かすための土台へと、軸足を移しつつある。