米ミネソタ大学ツインシティ校の研究チームが、掘り出したままの低純度の鉄鉱石から、追加の精製工程を挟まずに半導体として使える黄鉄鉱を作れることを確かめたと2026年8月13日に発表した。成果は学術誌『Physical Review Applied』に掲載された。
半導体づくりは本来、材料の純度を上げる作業と切り離せない。シリコンの太陽電池でも、原料を99.9999%まで精製する工程が値段の多くを占める。不純物が1つ混じるだけで、電気の流れ方が設計どおりにならなくなるためだ。今回の成果は、その前提が当てはまらない材料があると示している。
黄鉄鉱は硫化鉄の一種で、金と間違われる金属光沢から「愚者の金」の別名を持つ。バンドギャップはおよそ1電子ボルトで、光を非常によく吸収する。原料は鉄と硫黄だけ、どちらも地球に大量にあり、毒性もなく安い。太陽電池の材料として以前から目を付けられてきたが、これまでは精製した薬品から作るのが常識だった。
研究チームが試したのは、ミネソタ州のメサビ鉄鉱脈から採ってきた商用の鉄鉱石だ。3種類を比べたところ、最もよく働いたのは直接還元用のタコナイト鉱で、州内でありふれた等級だった。手順も込み入っていない。鉱石を還元して鉄に戻し、硫黄と反応させて硫化鉄にし、気相成長で結晶を育てる。それだけだ。
なぜ不純物だらけの原料で済むのか。理由は2つある。1つは、黄鉄鉱に対して効率よく不純物として働く元素が、そもそもごくわずかしかないこと。多くの元素が混ざっていても、電気的な性質にほとんど影響しない。もう1つは、硫化と結晶成長の工程そのものが、予想外の精製作用を持っていたことだ。研究チームは微量元素の分析でこれを追跡し、熱力学の観点から説明している。
できあがった単結晶は、室温での電子の密度と移動しやすさが、高純度の薬品から育てた結晶に迫る値を示した。研究を率いたChris Leighton教授は、黄鉄鉱は典型的な半導体とは違い、不純物に対して驚くほど強いと述べる。そこから、これまで自分たちも含め誰もが使ってきた高純度の材料は本当に必要なのか、という問いが出てきたという。
ミネソタ州は全米の鉄鉱石の75%を産出し、年間40億ドルを超える売上を生む。研究チームは今後、他の等級の鉱石を試すとともに、素子への応用に近い薄膜の作製にも取り組むとしている。