米ドレクセル大学を中心とする研究チームが、身ぶりや相づちを返すヒューマノイドロボットほど、失敗したときに失う信頼が大きいという結果をまとめた。人がロボットと話す最中の脳活動、唾液中のホルモン、アンケート、実際の判断の4つを同時に測った研究で、ロボットがミスを始めると、人の判断に及ぼす影響力は半分以下に落ちた。愛想のよさは関与を引き寄せる一方で、失敗したときの落差も大きくすると研究チームは指摘する。
ヒューマノイドは介護や接客、教育、家庭へ入りつつある。設計の現場では、表情や身ぶりを付けたほうが人に受け入れられ、多少の失敗も許されるという前提が置かれてきた。ただし、その前提を裏付けるのは主にアンケートの回答で、体の内側で何が起きているかまでは追えていなかった。研究チームは、信頼は1つの指標では捉えられないとして、複数の測定を同じ時間軸に並べる方法を採った。
実験には健康な成人男性50人が参加し、1人あたり約2時間半をかけた。相手はヒューマノイドロボット「Pepper」で、別室の人間が台本に沿って遠隔操作する。参加者を2群に分け、片方には視線を合わせ、話しながら身ぶりを交え、聞くときにうなずいて短い相づちを打つ「表情豊かな」Pepperを当てた。もう片方には、話す内容はまったく同じでありながら、身動きせず非言語の手がかりを出さないPepperを当てた。
各回は4分の雑談から始まる。旅行や音楽、食べ物、超能力といった話題で、ロボットが最近訪れた場所などを尋ねる。続いて共同作業を2つ挟む。無人島に取り残されたと想定して3つの品から生存に役立つものを選ぶ課題と、5枚の絵を好みの順に並べ、ロボットの批評を聞いてから並べ直す課題だ。最初の2回はロボットが的確に答えて信頼を積み上げ、3回目から失敗を始める。話題と無関係な発言をしたり、筋の通らない理由で自説を押したり、参加者の話に割り込んだり、同じことを何度も聞き返したりする。機械の故障ではなく、会話のルール違反にあたる振る舞いを選んである。
計測は4系統で進めた。額に当てたセンサーから近赤外線を通し、前頭前野の血流の変化を追い、唾液を3回採ってオキシトシンを測り、対話ごとに信頼と親密さを尋ね、映像からロボットの提案に合わせて判断を変えた回数を数える。表情豊かなPepperがルールを破ると、他人の意図を推し量るときに使う背外側前頭前野と内側前頭前野の活動が上がり、2つの領域の連動も強まった。身動きしないPepperが同じ失敗をしたときには、この反応が出ていない。研究チームは、前者では機械の不具合ではなく対人関係の違反として脳が処理したと解釈する。
意外だったのはオキシトシンの動きだ。家族や恋人、親しい仲間との間で増える「絆のホルモン」として知られるのに、ロボットが失敗した場面で増えた。しかも値が高い人ほどロボットを信頼せず、助言に従わなかった。研究チームは、ここでのオキシトシンが愛着ではなく警戒の信号として働いたと見る。責任著者の一人であるジョージ・メイソン大学のFrank Krueger氏は、表現力はただではなく、関与と引き換えに脆さも抱え込むと述べ、設計者が意識的に選ぶべき取引だと指摘する。参加者は若い成人男性に限られ、試したロボットも1種類にとどまる。成果は学術誌Science Roboticsに掲載された。